欧州の財政危機再び、日本は教訓をいかせるか

2010年11月22日 08:00

今年5月に表面化したギリシャを中心とする欧州の財政危機は、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)の金融支援によって一時落ち着きを取り戻していた。しかし、11月上旬、「PIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)」と呼ばれる財政状況が厳しいEU諸国の国債利回りが再び上昇しはじめた。とくに、アイルランドやポルトガルの国債利回りの急騰が激しく、アイルランド国債(10年)の利回りは11月10日には8%超にも達した。


図表:ギリシャ・アイルランド・ポルトガル国債(10年)の利回り推移
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理由は、アイルランドが国有化したアングロ・アイリッシュ銀行やバンク・オブ・アイルランドの救済コストが膨大に膨れ上がり、アイルランドの財政赤字がGDP比の30%超にも及ぶ可能性が出てきたからだ。
いまやアイルランドの金融システムは崩壊寸前で、その救済コストはさらに膨張していく予想が高まっている。このため、市場関係者が、アイルランドがギリシャと同様にIMF等の金融支援を受ける可能性が高まっていると判断し、アイルランド国債の警戒を強めはじめた。加えて、欧州版IMFの創設の議論において、「金融支援を受けた加盟国が返済できなくなった場合には、国債を保有する民間側にも損失を求める」とするドイツ提案も、市場不安を掻き立てた。

このような市場の混乱を受け、ドイツ・フランス・イギリスらの主要5か国による緊急共同声明によって、「既存の国債保有者は負担を被らない」旨の強いメッセージを発したことで市場はやや落ち着きつつあった。しかし、ギリシャ国債(10年)の利回りはいまも10%程度、アイルランド国債は8%程度で推移しており、欧州の財政危機が完全に去ったと判断するのは早計だろう。

実際、いまアイルランド政府はEUやIMFと金融支援について協議中であり、近々にも財政再建計画を公表予定としている。

ギリシャ危機は財政赤字の粉飾、アイルランド危機は金融の信用不安であるから、財政危機の経緯は異なるが、欧州財政危機から学ぶべき最も重要な教訓は、「市場の動きは素早く容赦ない。危機が表面化し、いったん市場の不安に火がつくと、それを鎮めるのは容易でない」ということだ。だから、政府は、できる限り早急に対応を進めておくのが肝要である。

翻って、日本の財政危機はまだ表面化する気配はない。そのためか、国民全体の危機感は薄い。だが、日本の公的債務残高(対GDP)は先進国で最悪であり、毎年約1兆円のペースで増加していく社会保障予算の安定財源を確保しない限り、近い将来、財政が危機的な状態に陥ることは明らかだ。

財政危機に陥ったギリシャ等と異なり、日本は内国債だから大丈夫という見方もあるが、拙書「2020年、日本が破綻する日」(日経プレミアシリーズ)で説明しているように、もはや時間は限られている。だから、一時的に国民に不人気の政策であっても、危機が表面化する前に、粘り強く国民に説明を行い、財政・社会保障の再生を進めておく必要がある。いまの政治には、欧州危機の教訓を踏まえつつ、日本の将来を舵取りしていく、強い意志と責任が求められている。

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