リフレ派の終焉

2010年11月27日 10:32

ふと気づくとリフレ派の議論はいつの間にか下火になっている。

当然と言えば当然だが、不思議と言えば不思議で、何がきっかけで人々はリフレに関心を失ったのだろうか。

それは人々が真の問題に気づいたからだ。


いわゆるQE2、量的緩和第二段が、米国で不発に終わった。導入前は、導入しなければFRBはつるし上げられるような雰囲気の論調が広まっていたが、これは明らかに市場関係者の意図的な論調誘導で、導入し、材料で尽くしになり、株価などが上がりきったところで、今度は批判が中心となった。

これは市場で短期トレードを行う機関投資家にとっては一粒で二度おいしいイベントで、上げ相場で儲け、下げ相場で儲ける。今週は、北朝鮮もあり、乱高下を演出して儲けた可能性がある。

それはともかく、終わってみれば、FRBの量的緩和を支持する人々は少数派に変わり、アイルランド問題が欧州で噴出した瞬間に、財政問題こそが重要という論調に一変した。

確かに、論調というのはいい加減なもので、右に行った後は左になるのだが、論調が揺れ動くことを嘆いても仕方なく、またそれ自体は重要ではない。肝心なのは、振れた論調が、オーバーシュートしていても、重要な問題に関し、方向としては正しく反応しているか、ということだ。

この点からは、リフレの議論は最悪だ。デフレは問題の本質ではなく、結果として出てくる現象であるから重要性は低く、リフレという手段は最悪の手段で、経済を悪くするからだ。

これは多くの何度も主張してきたことで、世論は、それにもかかわらずリフレをなんとなく指示していたわけであるが、ここに来て、その支持は雲散霧消した。その理由は、より重要で、手で触ることの出来る(tangible)な問題が目の前に大きく映し出されたからであろう。

欧州のアイルランド問題は、マジでヤバそうだ。そう多くの人が感じた結果、世界の論調の雰囲気は大きく変わった。財政。これは誰にでも直接関係ある。アイルランド人でなくとも、ドイツ人は支援のために増税が視野に入るかもしれない。それなのに、アイルランドは法人税12%。ふざけているのか。このような目に見える相手との直接の利害相反、負担の押し付け合い、これが起きて来る。これはリアルで、自分も巻き込まれる。すべての欧州人が、自分のこととして危機を捉え始めたのだ。

これは状況としてはいいことだ。なぜなら、世論がどう認識しようと、欧州の財政問題は存在し、どうやっても地道に借金を返す以外に解決する方法はないから、その問題を早く認識した方が、ショックも問題も小さくて済む。

イギリスは、ユーロ圏でないにもかかわらず、個別の支援を表明した。これは、欧州の問題は、財政と通貨の権限がマッチしていないユーロという通貨の構造的な問題だ、と言っていた人々が誤りであることを示すものである。通貨が同じであろうとなかろうと、経済的に結びついていれば、問題は波及するのであり、それは貿易という実物財のフロー取引よりも、金融的資産取引により大きな影響を受けるから、銀行融資の多いイギリスはもちろんアイルランドを救うインセンティブがあり、北アイルランド問題からも隣国の問題を無視はできないのだ。

つまり、欧州の問題は、財政問題であり、それがバブルによるものであったにせよ、政府の無駄遣いであっても理由は関係ない。赤字が残っており、それを解決するには、地道に返す以外に方法はないということだ。そして、それが明らかになったのが、今回のアイルランド問題であり、これは古くからの基本的な真実を再確認したイベントで、その基本を忘れていた世論、マーケットにとっては勉強になったと言う意味でプラスのイベントだったのだ。

この真の問題を前にしては、デフレ、リフレなどという問題は、得体の知れない、触れない、そして論理的でない問題として忘れられるだろう。真の問題は、雇用問題であり、為替問題が為替自体の問題ではなく、中小企業が壊滅するという問題であるのと同じだ。

雇用が、とりわけエントリーレベルの若年雇用が失われると、彼ら、彼女らは、一生、このハンデを背負っていくし、まっとうな労働市場には帰ってこないかもしれない。長期的な潜在経済力が労働力の質の低下により起こり、社会不安が高まり、日本のよさが失われていく、という本質の問題なのだ。

日本が財政問題に目覚めるのも、もうすぐだと思うが、そのときも、政府の財政が問題なのではなく、日本経済全体で、労働力と資本が有効に活用されないことにより、経済、社会が衰退していく、と言う問題である、という基本に戻る議論となることを願っている。

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