軽率すぎないか。岡田幹事長の大阪都構想批判

2010年11月29日 13:05

大阪市の平松市長のパーティに出席した民主党岡田幹事長から橋下知事、また維新の会の大阪都構想を批判する発言がありました。
ほんとうに大阪府と大阪市の関係をどうすべきか、また大阪都構想についても、まだまだこれから議論が深まってくるはずですが、「私たちは基礎自治体(の市町村)重視。(都構想は)大阪市の権限を吸い取って府に持っていく印象を持つ。地方主権でも何でもない」と大阪市の平松市長と同じ趣旨で大阪都構想の批判を行ったことは、あまりにも一方的なものであり、政権与党の幹事長発言としては軽すぎると感じます。


地域主権、地方分権と言った場合に、いくつかの視点から考えなければなりません。

まずは、現在は国の一律のルールや規制によって、地方の実情にあった柔軟な行政を行えない、国と地方の役割が重なり、無駄が発生しており、非効率を生んでいるという弊害が起こっているという問題があります。そのために地方に権限と財源を譲るというのは改善です。

しかし、もっと将来を考えて重要なのは、2点だと思います。ひとつは、少子高齢化が進んでくると、すべてを社会福祉費でまかなうことが困難になり、住民がお互いに助けあうことが必要になってきます。地域コミュニティや住民サービスのありかたの問題です。

岡田幹事長の「一番住民に近い市町村を重視して権限、財源を移して自立してやってもらう」という発言から伺えるのは、おそらく、地域コミュニティの特徴にそったきめ細かい、住民サービスを行う行政ということが念頭にあったのでしょうか。それも観念的であり、しかもなにか上から目線を感じます。

その点でも、岡田幹事長の「一番住民に近い市町村を重視して権限、財源を移して自立してやってもらう」とう発想は、大阪市の現状からすると論理が破綻しています。
大阪市は260万人を超える人口を抱える大都市でありながら、東京なら、区長選、区議会選挙がありますが、大阪市の場合は市長も議会もひとつしかありません。
大阪市の区部の行政を行っているのは、大阪市の職員です。都道府県人口と比較しても、大阪市の人口は、13位の京都府よりも多いのです。つまり、市民とははるかに遠いところで政治が行われているわけで、そのどこに、住民と近い行政の姿があるのでしょうか。

もうひとつは、この国の経済を再建するためには、どのようなカタチがいいのかの問題です。工業化による高度成長を達成するには、中央集権型の体制が適しています。それは日本がそうだったし、現在は中国がそうであり、韓国が経済危機を脱するために取った政策もそうでした。

しかし、労働人口が減少していく日本が、そのような高度成長型でやっていけるとはとうてい思えません。
GDPという視点ではなく、付加価値の高い産業、国際競争力の高い産業への転換によって、ひとりあたりの国民所得の高い国を目指していくべきだと思いますが、どう考えても、地方が経済的に自立できるだけの活力を取り戻せず、財政が悪化し、国におんぶにだっこ状態が現在以上に進めば、親亀ではなく、子亀がこけたら皆こける状態はやがてやってくることは誰にも想像がつくことです。

大阪府も市も経済規模で行けば、充分に一国の規模を持っています。それを起点に考えると、世界、とくにアジア圏でどのような特徴や強みをつくり、独自のポジションをもった地域になれるのかどうかが重要になってきます。
以前にも書きましたが、大阪府は、域内総生産額が39兆円の経済規模であり、それがどれぐらいかというと、世界各国のGDPと比較しても20位以内に入り、スイスやベルギー並です。それがひとつのローカルな地方でしかない姿のほうが不自然です。それは域内総生産が、36兆円という愛知県にも同じことが言えます。

問題は、人口で言えば、大阪府に占める大阪市の人口の割合はおよそ30%ですが、域内総生産では、大阪市は大阪府の60%強も占めていることです。想像もしてみてください。経済規模が国で比較しても世界第20位ぐらいの地域のなかに、世界第30位の国家規模に匹敵する経済規模をもった国があるのです。大阪府と大阪市の関係の歪もそこから生じてきているように感じます。

だから、大阪府と大阪市で、互いに張り合い、またやることが重なり、バラバラな行政が行われてきた不幸な歴史、「府市あわせ(不幸せ)」をどう解決するのかという問題があります。

実際は、大阪市の周辺都市は大阪市の経済を支える人びとの住宅街であったり、本社を大阪市に置く企業の工場などがあり、経済としては一体化しているのですが、それが大阪市に集約されているという構図です。しかも大阪市には、空港もなく、また市内には大学も研究施設も少なく、世界やアジアでの都市間競争を想定すると、機能が不足しています。

岡田幹事長の頭からは、すっかり地方経済をどのように活性化するのかという視点が抜けているのではないでしょうか。平松市長は近畿圏という広域での緩やかな連携ということで大阪都構想と張りあっていらっしゃいますが、それは現実を考えると、なにもしないということを表明していると同じだと感じます。
近畿圏の経済の連携は必要ですが、それができるのは、核となる大阪経済圏が活性化してこそです。失敗ばかり積み重ね、赤字に苦しんでいる自治体が、近畿経済を結ぶ役割を担えるはずがありません。

大阪の問題は、大阪府民や大阪市民だけの問題にとどまりません。この国の政治や経済をどのように再設計するのかの問題でもあり、ぜひ関心をもって頂きたいと願っています。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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