一旦見捨てろ日本農業

2010年12月03日 12:33

日本の農業再生には、農業人口の新旧交代が絶対条件である。その為には、全てを一度「破壊」して、永続可能な「自立的農業」を目指したスクラップアンドビルドが必要である。この改革の焦点は、経営マインドと価値観の変更であるから、離農者からの土地取得を除けば、巨額な設備費は必要としないが、農地取得には農林中金の活用など少し工夫が必要であろう。


日本経済の奇跡は、スクラップアンドビルドの繰り返しで勝ち得た成果で、その間、これを怠った多くの事業が消えて行った。日本農業は無風の時代が余りにも永すぎた。

農業従事者の世代交代には、若年層に魅力的な新しい農業環境の整備と、高齢農業者の大量離農を促す事が不可欠である。この実現には、農業への参入障壁を下げる事と、高齢農業者にとって引退が魅力的に思える環境を整備する事が肝要である。然し、新旧交代は飽くまで当事者の自主性に任せるべきで、如何なる形でも、国家の強制があってはならない。

スクラップアンドビルドの第一歩は、補助金の全廃である。補助金無しに自立出来ない農業は、理由の如何を問わず見捨てる事が、改革の絶対条件である。乱暴に聞こえるこの提案は、子供の自転車から補助輪を外すに似た不安を伴うが「案ずるより生むが易し」であることは、多くの産業が繰り返して来たスクラップアンドビルドの成功例からも明らかである。

生活の支えであった補助金が廃止されれば、多数の離農者が出る事は当然で、又、それが廃止する目的の一つである。高齢農業者には残酷に聞こえる補助金の打ち切りも、離農を選択した高齢農業者には手厚い離農手当てを支払い、勤労しなくとも従来程度の生活を保障すれば、寧ろ福音となる可能性すらあり「戸別所得補償費」をその財源に廻した方が,遥かに国益に沿っていると考える。

現在の補助金政策は、若年層を勧誘する魅力は無く、老齢化した農民の生活を保障するには足りない。寧ろ、農業の新旧交代を妨げ、老齢化を促進する効果しかない。これでは、長期的な食糧自給など夢の夢である。

農業者に高い流動性と大幅な選択手を与えない限り、若者は勿論、企業農業を牽きつける事は出来ない。流動化の最重要点の一つは、農業用地の扱いである。それには、土地本位制農業を支えて来た農地法は勿論、関連諸税法、農振法、農業経営基盤促進法から始まり景観規制、環境規制、市街地規制など気が遠くなる程の法規の見直しが必要となる。

積年の垢に埋まった日本の農業関連法規を、手直ししても考えが古すぎて使い物にはならない。終戦時同様、「農業GHQ」的な超法規的組織を導入する事が必要である。その場合、農業者から障害だと指定された法規は、事業仕訳で使われた様な公開審議機関(農業GHQ)の審査で「障害」と判定された法規は、適用除外にする事も必要である。

地域の自然や地理的条件に大きく影響される農業の特徴を活かしながら、競争と創意工夫を奨励する為には、農業作物の品質や安全の基準と税を除いた農業関係法規はすべて地方単位にすべきであり、国法にする事は極力避けるべきである。

日本の農業論議を混乱させている一因に、農業を伝統や文化の一端と捉えるか、産業と割り切るかの微妙な問題がある。日本農業の再生を考える場合は、文化的、伝統的側面は一切考慮せず、産業として捉える事が重要である。

日本農業再生策は、食料自給論も棚上げして、永続可能な自立的農業だけに焦点を絞って考えるべきである。農業が栄えれば結果として食糧自給は達成されるのであり、食糧自給を農業論議の中心に持ち込む事は,旧態以前たる農業に固執する守旧派の思う壺である。

かと言って、日本農業の伝統的文化価値を否定するものではない。産業としての農業と伝統、文化の価値を別の問題として捉えているに過ぎない。産業論に必要な、規模、効率、生産性を文化や伝統に持ち込む事は不自然である。

経済官庁である農水省は農業を産業としてのみ捉え、伝統、文化論の側面から考える場合は、必要な予算はすべからく「文科省」の予算に組み入れるべきだと言うのが、私の主張である。

産業としての農業の唯一最大の目標は永続可能な「自立経営」である。この新しい目的の設定は、美味しいお米や栄養豊富な食料、単位面積当りの収量や大規模化などを目的の地位から手段に引きずりおろし、結果として農民の価値観を激変させる効果がある。

換言すると、補助金を無くす事により、専業農家、兼業農家、企業農業などの経営スタイルは勿論、作物やその質の選択はすべて各農業者の責任で選択する事になる。

ルイビトンの様な海外ブランドには大金を払っても、世界に類例の無い日本農民の傑作を買い叩く日本の消費者を見捨てて、海外の富裕層に日本の農産物を高価に販売する事を覚えれば、これも日本農業を一旦見捨てるメリットの一つである。

農業人口の世代交代により、経験豊かな離農者をコンサルタントにしたり、世界に冠たる日本の小規模農業のノウハウをベースに海外進出したり、農業エンジニアリングなどの新規企業の設立も盛んになる事を期待したい。

1971年のニクソンショックで高騰した円貨にも拘らす、売れ続けた日本製品を見て、国際取引の最前線にいながら、日本製品の市場価値を知らなかった自分を恥じた経験を持つ私は、日本農業が製品の市場価値に目覚めて自信を持つ事を強く奨めたい。

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