大学生が多すぎる

2010年12月06日 21:58

今週のお題は「就職」。身近で切実な問題なので、たくさん投稿が来ていますが、私はあえて問題提起として、常識とは逆の話をしたいと思います。

大卒の就職内定率が6割を切った原因は、求人倍率が低いからではありません。リクルートワークス研究所の調査によれば、2011年大卒の求人倍率は1.28で、前年より減ったものの、依然として需要超過です。この調査が始まった1987年以降で倍率が1以下になったのは、2000年だけです。ではなぜ4割の学生が就職できないのでしょうか? 


それは彼らが選り好みしているからです。規模別にみると、図のように従業員5000人以上の大企業は0.47倍なのに300人未満の中小企業は4.41倍で、新卒に関する限り問題は絶対的な求人不足ではなく、需給のミスマッチです。中小企業(特に流通・外食)は慢性的に人手不足ですが、大学生は行きたがらない。それは、彼らが大学に進学したのは大企業のホワイトカラーになるためだからです。

recruit

しかしJBpressで紹介したように、1985年から2010年までの25年間に、学生数は56%も増えました。90年代に「就職氷河期」と言われた時期から大学生が50万人以上増えているのだから、供給過剰になるのは当然です。大卒=大企業ホワイトカラーという図式はとっくに崩れ、昔でいえば高卒の職種しかないのに、それをいやがるから就職できないのです。

そもそも大学は、企業にとって役立っているのでしょうか? 学歴と賃金に強い相関があることはよく知られていますが、これには二つの考え方がありえます。大学教育によって形成される人的資本の価値が賃金に反映しているという説明と、学歴が能力のシグナルになっているからという説明です。

Pritchettが世界銀行で行なった数十ヶ国の実証研究によると、1960年以降の経済成長に教育のもたらした効果は、統計的に有意ではありません。特に大学教育は、人的資本形成にはほとんど寄与していない。つまり大学はシグナリングの装置であり、大学進学は私的には収益率が高いが社会的には浪費である、とPritchettは示唆しています。

もちろん大学教育にはそれ自体の価値もあり、研究者の養成や一般教養なども重要ですが、そういう教育の必要な学生は多めに見積もっても全体の1割程度でしょう。知識産業が重要性を増していることは事実ですが、現在の大学教育はまったくその要請を満たしていない。

要するに就職難の根本的な原因は、必要のない教育を受けてプライドだけ高くなった大学生が多すぎることなのです。少なくとも経済成長という観点からは、大学教育は社会的な浪費であり、公的助成の対象にすべきではありません。今後は、専門学校のような実務教育に重点を移すべきでしょう。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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