まず5年後、10年後の日本のあるべき姿をイメージする。そして、その日本に必要とされるような人材となることを目指す。

2010年12月07日 00:32

私の以前のアゴラ・エントリー、「明治維新が二度と起らない理由」が、最近思いがけずアクセス数を伸ばしておりました。

「こはいかに?」と思っておりましたら、ネットセレブな方々が再度ツイッターで取り上げてくださったことが原因らしい。ありがとうございます。

おかげさまで色々とフィードバックをいただき、それを興味深く読ませていただきました。


おおむね論調に同意してくれている方々が大半という印象でしたが、「想定の範囲内」程度に、あからさまに私を「バカ」呼ばわりされている方々も散見され、なかなか楽しいツイッター風景でした。

しかし中には看過できない反対論調もありましたので、ここでそれを取り上げたいと思います。

私が書いた、

...「日本」という殻にとじこもり、
「私の雇用を守ってくれ、賃金を保証してくれ...」
と、主張される方々は、例えばアジアの発展途上国に住む、貧しいけれどなんとかして娘を学校に行かせてやりたいと願っているお父さんの希望を犠牲にしてまで、なぜあなたの雇用と賃金が守られなければならないのか、自らの労働の価値の正当性を日本という枠組みを超えて立証しなければならない時代になったのだ、ということを頭の隅にすこし置いておくのがいいかもしれません。

という部分に対し、

「日本の為政者が日本人の利益を第一に念頭に置くことは当然だ。発展途上国の人々のことを考える前に、日本人のことを考えろ。そうでなければ憲法25条(生存権)違反だ!」

と、主張される方がいました。

まずは、「国のあり方」という根本的な問題を、憲法論ですすめるというあたりが、度し難く中華的な経典主義の宿痾です。法律はあくまでも国民精神の表現の一方法にすぎず、法律をもって国民精神を形作るというのはアベコベな話です。

ここらあたりの私の考え方に関しては、以前「道理:日本人の法律観と経典主義という癌」というエントリーでもとりあげましたし、「あんなレベルの議論と報道で日本国民は満足したのでしょうか(天皇陛下の習近平副主席との特例会見に関して)」の冒頭部分でも取り上げましたので、興味をもってくださる方はそちらを参照してください。

法律論はひとまずおくとして、この反論の根本的な間違いは、日本人の幸福を他国民の犠牲の上に実現させることを諒とする、その浅薄な考え方です。

そりゃ誰だって、

「他人様のことを心配する前に、自分のことを心配しろ」

という論調に反対する人はいません。

しかし長期的視野に立ち、二手、三手先をよんだ場合、こんな身勝手な国是の上になりたった日本、ひいては日本国民の「幸福」が長続きするわけがないのは火を見るより明らかです。

資源貧国である我が日本。

発展途上国、とくにアジアの新興国が躍進する今現在という世界史上の転換期。

今後、我が国の技術力を利して、これらの新興国の人々の生活水準向上への提案を通じて、人口減少期においても、国の経済成長を期そうという国家戦略。

これらの事情を鑑みた上で、口をついて出てくるのが、

「いまちょっとこっちは手元が苦しいので、そっちはしばらく貧乏のままでいてくれたほうがうれしい。」

では、とてもじゃありませんが、

「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」

と思っている国の人がいうことではないでしょう。それ以前に、国の経済がなりたちません。

本来、このように高所に立って、国のいくべき道を指し示すのが政治家のお仕事なはずですが...まぁ、暗い話はヤメましょう。

「他国の犠牲の上に自国の繁栄を築く」という考えは、なにも大昔だけの話ではありません。近くには、「国家社会主義」などということを謳う政治運動がドイツに興隆しました。

「貴公、知っておるか?アドルフ・ヒットラーを...」

後世の人間に「世界を読み切れなかった人種」、などといわれたくないものです。

今後はますます「日本だけ」を考える、または「日本だけ」しか考えられないタイプの人間はダメで、「世界」を視野にいれた考え方が出来る人間が必要になってくると思います。

以上をふまえた上で、現在の世界を俯瞰し、一日本人として我が身を省み、その処すべき道筋を考える時、私は今回の標題のごとく、

「まず5年後、10年後の日本のあるべき姿をイメージする。そしてその日本に必要とされるような人材となることを目指す。」

ということが、重要なのではないかと思うに至りました。

人と生まれて、雨風を避ける住居と食べることの為に、お金を稼がなければならないのはもちろんですが、「人はメシのみにて生くる者に非ず」。お金に換算できない「何か」が、「骨太の人生」を生きるためのエネルギーとしてかならず必要になってきます。

その「何か」とは何でしょうか。

先日、私が共催させていただいている勉強会でお話してくださった、当アゴラの常連執筆者でもあられる松本徹三さんは、ご本人の商社マンとしてのご経歴に触れられて、

「当時、日本からの輸出という仕事に携わっていた私たちには、国の役に立っているという自覚と誇りがあった。」

と、おっしゃっておられました。また同じく勉強会に参席してくださった磯崎哲也さんも、その著書「起業のファイナンス」で、成功する経営者に関して次のように述べられています。

「しかし、成功する経営者がもっているその「動物的欲望」というのは、単に「自分だけ金持ちになればいい」といった利己的な欲望ではなく、「自分が作ったサービスを誰もが使うようにしたい」とか「世界を変えてやる」といった、もうちょっと「公的」で「他者に働きかける」欲望だという気がします。」(78~79ページ)

「お仕事」を語る上において、「お金」はもちろん大切です。しかし、我々は心の根本の部分で、その「お仕事」が

「他者に働きかける」

「他者の役に立つ」

「他者に必要とされる」

といったように、自分と周囲の人を繋ぐよすがとなり、その仕事において人に評価され、かつ認められるという「自己発現」につながることを期待しています。

そしてそういった評価や、人に認められるということが大きな励みとなり、さらなる勤労意欲、事業欲の源泉となっていくことは間違いないでしょう。

またそうした「他者に働かける」自己発現の欲望が強い人ほど、経営者として成功する人なのです。

これは私個人の考えですが、我々日本人は、こうした個人の仕事における成功に関して、他の人種にまして「公の精神」の重要性は強調する人々ではないかと思います。なにごとも過ぎたるは及ばざるがごとしですので、時には「利潤」を軽視し、行き過ぎた「自己犠牲」を強要する、たんなる貧乏人のひがみに過ぎない小市民的道徳観の強制はいただけませんが、原則としてこうした日本人の価値観は貴重なものであり、他にまさる日本人の美徳であり、また国際社会というより大きな背景の中でも変わらずに大切に育まれるべきものだと思っております。(以前のエントリー、「愛国心が必要とされる時」をご参照ください。)

かくも根が善良で、良心的な我々日本人が、自らの繁栄の為に他国民に犠牲を強いつづけることができるでしょうか。

世間様に認められたいという、このいじましい国民性を共有する我々が、毀誉褒貶と無関係な場所で稼業に精を出すことができるでしょうか。

今、手っ取り早く金になる、または人の耳目を集める仕事を追いかけるのではなく、じっくりと5年、10年先を自分の目で見つめ、そこで必要とされるであろうと自らの判断したスキルと能力を、時間をかけて本物のレベルまで高めていく。

今の私たちに出来ることは、これに尽きるのではないでしょうか。

5年後どころか、来年のことさえどうなるか分からないご時勢ですが、だからこそあえて目線を上げて、見えないものを見ようとする努力が大事なのだと思います。

エラそうなことを言っておりますが、これも私の今までの人生における数多い「マチガイ」と「カンチガイ」、そしてイギリス・東京・ケイマン・ニューヨーク経由で現在の香港まで続く「まわり道」の末に、やっとのことでたどり着いた感慨です。

私は出張や一時帰国の為に、香港/日本便を予約する場合、出来るだけ日中のフライトにし、そして日本から発つ便では右翼窓側座席を、日本へ向かう便では左翼窓側座席を必ず選びます。

その理由は窓から見える風景です。

例えば東京(羽田)発の場合、天候にさえ恵まれていれば、離陸後すぐのタイミングで、この時期には冠雪の富士山の頂上が、雲海の彼方に垣間見えるかもしれません。

その後、飛行機は若き日の龍馬が夢を見た海、土佐湾沖の上空を通過し、神武東征伝説ゆかりの地、日向の海岸線を割り、九州最南端へ向かいます。

ここでも、天候にさえ恵まれていれば、噴煙たなびく桜島が浮かぶ錦江湾が見えるでしょう。

これと同じ風景が、かつて祖国日本のためにと、知覧の特攻基地から南の空へ飛び立って戻ってこなかった人々が、最後に見た風景だったのです。

私はこれらの風景を後にし、先人たちがその命を散らした沖縄・南西諸島の島々の海と空を越え、そのさらに先の空へ飛んでいく自分の姿をイメージする時、飛行機の狭い座席の中で武者震いするほどの気持ちの高まりを覚えます。

そして、その度に

「日本人に生まれてよかった。」

と、思いを新たにすると共に、全身に力がみなぎってくるのを感じるのです。

我が胸の燃ゆる思いにくらぶれば 煙は薄し桜島山

矢澤豊

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑