アクセスコントロールの弊害についての補足

小寺 信良

昨日のエントリーでは、まず関係するであろう部分としてjailbreakの例を出した。しかし本当は、もうちょっと深いところまで心配している。それは、日本のエンジニアリングの萎縮である。


Xbox 360 Kinectセンサーというのをご存じだろうか。これはWiiみたいに体のアクションを使ってゲームするためのインターフェースだが、リモコンを手に持つ必要はない。カメラと赤外線センサーを組み合わせて、人体をセンシングする。今ネットでは、これをハッキングして様々な技術を競い合うという、面白い現象が起きている。

例えばこれとかこれとか。これはKinectセンサーを動かすオープンソースのドライバが出たことに端を発した実験である。マイクロソフト側はこれらの現象に対して、黙認の姿勢をとっている。目的外の使用であっても、実質的な被害はないからだろう。

アクセスコントロールへの規制は、こういうムーブメントが日本だけで起きない、起こせないという可能性も出てくるのではないか。日本のエンジニアは、ハッカーというよりはきっちり真面目な人達が多いので、あきらかに違法認定されたものには手を出さないし、面白い技術を開発しても発表できなくなる。これは日本の知財戦略にとって、大きなマイナスになり得る。

ありもしない被害を想定して幅広く規制することで、日本にとって唯一の資源である「人材」を潰してしまうかもしれないという、大きな視点に立っての議論が必要なのではないか。

Xbox 360 Kinect センサーXbox 360 Kinect センサー
販売元:マイクロソフト
(2010-11-20)
販売元:Amazon.co.jp