日本の予算編成に就いて-山口 巌

2010年12月24日 05:10

「政治主導」を旗印に昨年政権交代を成し遂げた民主党であるが、仄聞する所、最重要である筈の「予算編成」既にギブアップ状態で財務省への丸投げでお茶を濁すつもりらしい。一方、予算編成とコインの裏表の関係にある「税の徴収」も最近の識者・論者の書いたもの読む限り増税一直線、「苛斂誅求」の文字が近い将来地下鉄の週刊誌の中刷り広告に踊るのではと思う。酷い話である。


それにしても政府が、何の為に、誰の為に、どちらの方向に向かい、何をしたいのかさっぱり見えて来ない。ダッチロールする飛行機の乗客がコックピット覗いてみたら操縦席にパイロットが居なかったみたいな笑えぬ話である。既に、ダッチロールで気分が悪いと文句を言う段階では無く飛行機を兎に角目的地迄操縦し無事に着陸させる事の出来るパイロットを探し操縦桿を握らせねば成らない。

目下の急務は、例えば5年間で「プライマリーバランス」を均衡さすと決め、財政削減計画と歳入増大計画を立案し5年後に右肩下がりの歳出と右肩上がりの歳入が交わる様にする事である。無論6年目以降は黒字化する。

財政支出削減の為には「社会保障費」に大鉈振う事は不可避であり、当然此れにぶら下がる国民や一部の既得権益者、彼らと連携する官僚は大反対するであろう。公務員改革を中核とする行政改革も断行せねば成らない。中途半端な物では意味が無く省庁の廃止も含め、国と地方併せこの際公務員数を現在の三分の一とか四分の一とかを目指すべきと思う。

その為には既に歴史的意味を失った役所を廃止するとか民間で出来る事は例外認めず民営化する、或いは公務員の労働生産性を民間レベルにまで高める等を抜け道作らさず実行する必要がある。無論、役人の抵抗は凄まじい物が予想される訳であるが。

一方、歳入増大の為には経済の活性化、労働生産性の向上がマストである。財務省が企画している様な風邪の患者にバケツで冷水かけるが如き増税「苛斂誅求」では風邪拗らせ下手したら肺炎に成り死んでしまう。経済の活性化、労働生産性の向上を達成する為には、古く成り機能しなくなった社会のシステムを今の時代に合ったものに作り変えるとか、もっと根本的に国民の意識を抜本から変えるとか事は単純ではない。それ故に議論は急ぐべきだ。

此の議論を進める為には、今世紀日本の目指す国家像を明確にする必要がある。本来政府が国のあるべき姿を提示し国民のコンセンサスを得た上でその為に必要な政策を実行すべきなのだが、現政権見る限り体系的に情報を整理し課題や有効な施策を考えぬ抜く事を習い性としている閣僚、菅氏筆頭に見当たらず、結果あるべき国家像の不在が議論の堂々巡りと成り、何も決める事出来ず時間切れで官僚に丸投げに成っている様な気がする。

それでは日本の目指すべき国家像とは如何なる物であろうか?極々簡単に言えば日米同盟に安全保障の軸足を置いた「通商国家」、「海洋国家」では無いかと考えている。日米同盟を外交・安全保障の基軸とする事と経済発展著しい中国や中国に雁行する新興産業国ともイデオロギーを超えて友好関係を発展させ交易を拡大して行く事は共存出来る筈である。

日本はそもそも国の成り立ちが東西南北海を越えやって来た様々な民族が混血を繰り返し出来上がった国である。江戸時代末期の国力の衰退は日本人の此のDNAを無視して鎖国をした結果だと思う。余談ではあるが日米同盟こそが安全保障の基軸との国民コンセンサスがあれば沖縄の基地問題此処まで迷走する事は無かった筈だ。

同様、「通商国家」、「海洋国家」のコンセンサスが国民にあればFTA,TPPへの加盟は自明の理であり一部の農業関係者の反対はあっても此処まで迷走する話とは思えない。FTA,TPPへの加盟に依り本来既に淘汰されていなければ成らなかったゾンビ企業の多くが撤退を余儀なくされ此れにぶら下がった行政機関も不要と成りかなりの財政支出が軽減される筈である。又、生産性を伴わないと言うか、ある意味マイナスの生産性の組織に属す人間がそこから放出される事で

少なくとも生産性の伴う職に転職する筈である。こう考えるとFTP,TPPへの加盟は今や待った無の状況と成っている日本のあるべき変化の縮図に思える。

税収を増やす為の王道は国内企業が活性化し黒字決算の達成に依る法人税の納税、社員の年俸増加に依る所得税・住民税納税の増加、そして可処分所得が増える事に依る消費の増加と此れに付随する消費税の納税増加とか。だから、政府は既に不要に成って居る様な、或いは時代遅れの規制を徹底して廃止、緩和する事で企業のやる気に火を付け、油を注がねば成らない。又、各都市は企業を税を納めてくれるお客様と心得徹底して支援すべきだし、此れと併行し都市間で企業誘致の真っ向勝負をやるべき。都市間の競争が結果企業活動の為のインフラの改善に繋がり好結果に至ると考える。

ROA(Return on Asset)をどうやって上げるか此処まで来たら政府としても真面目に考えるべきだ。日本の資産と言えば突き詰めれば「日本人」しか無いのでは無いか?

それにしては、働く意欲もあり、能力もあるのに待機児童の問題で子供の育児に手を取られ働けないで居る女性とか、現在社会問題に成って居る、就職希望で就職出来ない大卒、高卒の若者のとんでもない多さとか、或いは此の原因でもある終身雇用、年功序列に守られ企業に滞留し高級貪る中高年正社員の問題とか早急にメス入れるべきである。

矢張り解雇規制の撤廃含め労働市場を流動化させ性別、国籍、年齢とかに関係なく能力と会社利益への貢献度で評価する分り易いシステムに急ぎ変更すべきである。それから、待機児童問題政府で解決出来ないのなら法人税減税とバーターで各企業に提携する保育所を充実させるとか何かやり方ある筈だ。

人が最大資産の日本であるなら、日本人の労働生産性をどうやって飛躍的に高めるか真剣に検討すべきである。従来の延長線上を何も考えず歩いている様では所詮じり貧の先細りは明らか。アメリカの例を観て感じるのは「破壊的イノベーション」のみが労働生産性を劇的に上げる起爆剤でありえると言う事実である。日本の様に10人の秀才が会議をして最大公約数的な結論を出すのでは無く、一人の天才が全てを決め回りは天才が如何に奇人、変人、或いは半分狂気の人であったとしても只管支援するのである。こういう事が出来る為には小学校からの教育のシステム見直しとか、会社や役所含めた社会の仕組みそのものを変えるとか、或いは国民の意識を根本から変革するとか、決して簡単な話では無いが議論は始めるべきだ。

日本を抜本改革する為には、強い政治家に依る政治主導が必要で現在の如く地方交付税に寄生する地方有権者の票が、重い税を負担する都市住民の5倍もの価値があるという矛盾は早急に是正すべきである。そして国民がばらまきに対し激しい嫌悪感を持ち、一方ばらまきの受益者が罪悪感を持つように成らねば日本は何時まで経っても真面な予算編成等出来ないのだ。

(山口巖 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役)

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