大阪経済から日本の縮図と未来が見えた年 - 石川貴善

2010年12月27日 20:36

2010年を振り返りますと、地方都市に出張した際には必ず街を見て回っていますが、何年かぶりに行きました大阪では、今の日本が抱える縮図と同時に未来が見えた年でもありました。地方経済は日本の近未来を先取りしている面がありますが、特に大阪は濃厚な縮図となっています。


衰微している傾向として、

1)ラッシュ時でも人が少なく、駅のホームや電車に広告がない。

2)道行くビジネスマンも、年配か20代の方が多い。

3)放置自転車が多い・・・東京と異なり坂が少なく距離も短いため、中心部にも自転車が多いのが特徴です。

4)豊臣秀吉の時代からの商都ながら、近江商人や松坂商人ほどルーツを大切にしない・・・大阪商人発祥の記念碑や記念館など見ましたが、あまりルーツを大切にしない印象を受けました。

5)夜のイルミネーションが暗い・・・中国から日本に来た観光客は東京の夜景を見て、「停電か?」という感想が多いですが、東京と比較しますとこうした意識は分かる気がします。

6)長距離バス・タクシーなど、価格競争のつぶし合い・・・大阪のタクシーは「5000円以上5割引」の体系を引く所が多く、同業同士でつぶし合う面は否めません。

7)19世紀型の産業と労務構造・・・繊維・金属・造船・家電・商社・金融・新聞など、大阪発祥の企業が多く、中には江戸時代の商家から発展した例も少なくありません。産業構造では繊維・家電ではアジア経済の影響を受け、また金融・サービス業は本社の東京移転などの影響を受け停滞しています。

osaka
※写真:地下鉄御堂筋線のホーム/東京以上に広告が入っていないのが印象的です。

また企業風土・社風などを鑑みますと、在京の会社は保守的な会社でも昭和の匂いを感じますが、大阪の伝統的な会社は、産業構造と社風から19世紀の匂いが否めません。

歴史的にも大阪は高度経済成長の時代まで住込みの奉公人が多く、年功序列や終身雇用は長く商家に勤めて年功を重ねて暖簾分けに至るプロセスが、日本的経営につながったとも言われています。そのため在阪企業は大企業のルーツとなり、江戸は中小商家が多く後期からは通いで勤めるスタイルが増えていますので文化的な背景が起源ですが、今の時代ではあまりプラスに作用していません。

8)こだわりから生じるワークフローの長短・・・ワークフローにも文化差が見られ、阪神タイガースへの熱狂と同様に、とことん追求してこだわりを表現することで差別化を行いますので、特に衣食住産業(繊維・アパレル・食品・住宅など)は現在でも強い競争力を持っています。

逆にスピードが求められ、「走りながら考える」ことの多い情報通信・サービス業などでは、大企業からルーツを持つ企業が多いことと重なり、「強みが弱み」に作用しています。

ただし負の面だけでなく将来的に大きく成長するシーズも見られますので、こうした資産を長期的かつ戦略的な観点とスピードを持って取り組むことがカギになります。

(1)将来的に大きな市場規模とニーズが見込まれる、製薬・新素材繊維・大証FXなどの金融商品・ディスプレイ分野など、得意となる産業を最大限に活かす。

(2) 地下鉄御堂筋線ホームの高い天井に見られるように、昭和恐慌の時代に雇用を増やすため大々的な工事が行われましたが、雇用とインフラ整備を留意した展開を行う。

(3)大阪は江戸時代から行政機関が少なく、反権力の意識が強いことから民間主体で進んできた社会のため、「土性骨」と大阪人の持つ高い計数能力を活用する。

(4)第二の大都市圏や関東大震災後の「大大阪」にあぐらをかいていた面も否めないため、東京を意識するより上海・シカゴ・ミュンヘンなど、首都でなくても経済・文化面で一定の発信力を持つ都市経営を展開する。

厳しい指摘もしましたが、2010年は厳しさの中にも新しい時代の匂いを感じた年でもありますので、「大阪が元気になって日本も元気になる」ことへエールを送ります。

(石川貴善 有限会社ITソリューション取締役Twitter:@ishikawa_taka

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