就活という「お見合い」ゲーム

2010年12月29日 12:34

就職についての投稿は、まだ募集中です。この問題は反響が大きいので、来年1月から「アゴラ就職セミナー」というシリーズを始める予定です。その問題提起として、先日の『就活エリートの迷走』の書評にいろいろコメントをいただいたので、まとめてお答えしておきます。

最大の疑問は、求人側にとっても求職側にとっても不合理な「新卒一括採用」という雇用慣行をなぜ続けているのかということでしょう。あるエンジニアから「コーディングの能力は実際にプログラムを書かせたらすぐわかるので、そういうコンテストをやって採用したらどうだろうか」という話がありましたが、残念ながら総合職はそういう採用ができないのです。


たとえばCOBOLのコーディング能力の高いプログラマを採用しても、Cが主流になったら彼のコーディング能力は役に立たない。さらに経営が変わってコーディングをすべて下請けに出すようになったら、本社にプログラマはいらない。しかし不要なプログラマを解雇できないので、そういう専門能力で採用することはリスクが高い。素直でどんな仕事も文句いわないでやる汎用サラリーマンを取るしかないのです。

したがって本社採用は銘柄大学の学生を面接して、受け答えがはきはきしているとか会社の業務内容をよく調べているといった、どうでもいい特徴で選考する。学生のほうはどういう能力が問われているかわからないので、就職セミナーで情報収集してゲームのルールを推定し、想定問答で「プレゼン能力」を高める。その結果、就活は出身大学と見た目でほとんど決まる、お見合いのような儀式になってしまった。

他方、コーディングなどの専門的な仕事は下請けに出されるので、ソフトウェアは低賃金・長時間労働になってしまう。仕様は親会社のサラリーマンが決めるので現場の士気が下がり、いい人材がソフトウェア産業に集まらない。新卒一括採用は、大卒の人件費が年金も含めて4億円以上の固定費になる日本の雇用慣行のもとでは、やむをえないリスクヘッジなのです。

日本の会社がだめになった一つの原因は、こうした古い雇用慣行で専門能力を無視した採用を続けてきた結果、新興国との技術競争に敗れたことです。これから日本の企業がグローバル競争に生き残るためには、専門能力をもつ人材を雇うしかないのに、大企業の人事部は総合職の一括採用をやめない。それは彼らに専門能力を見る能力がないからです。

しかしこれは宿命ではない。日本でも外資系企業では、職場のボスが即戦力を採用するので、新卒より経験者が優先されます。クビにするときも、訴訟を起こさないよう金銭で解決することが人事部の仕事です。日本と同じ終身雇用だった韓国でも、IMFの介入後は「肩たたき」による退職勧奨で、実質的に終身雇用はなくなったといわれています。

日本の長期不況をもたらしているのは、このような古い雇用慣行とそれを補強する解雇規制や司法判断です。この状況を学生が変えることは残念ながら不可能ですが、大企業が変えることは可能です。パナソニックやユニクロのように海外から採用すれば、政治家や官僚もそのうち目が覚めるでしょう。

池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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