移民受け入れは待ったなし―深刻な人口動態

2011年01月06日 11:20

厚生労働省の推計によると、我が国の人口は2055年には9千万人を割り込み、然も、高齢化率は40%を超える見込みとなっている。この人口動態予想は、年金の負担に加えてGDPの2倍の借金をしている財政の現状を考えると、背筋が寒くなる程恐ろしい話である。


国富の40%を破壊された第二次世界大戦後の日本に、600万人と言われる引揚者、復員者が帰国してきたのが、今から60年前の日本であった。その為もあり、当時の日本は人口過剰と資源不足にインフレが加わる大難問に直面し、東京は失業者や浮浪者で溢れ,街には「闇屋」が横行した。それでも当時の日本人は、老若男女を問わずひたすら働き続け、奇跡の復興を成し遂げただけでなく、世界でも有数の豊かな国を作り上げた。

敗戦と言う特殊事情はあったにしても、国民所得水準が当時のフィリピンを下回る貧困国家から、前例のないスピードで世界トップクラスの富める国に変貌させた「秘密兵器」が、過剰人口であった事は皮肉である。

資源に恵まれた発展途上国が経済的に低迷し、人口過剰と資源の貧困に悩んでいた日本が奇跡の発展をしたのは何故か?

朝鮮戦争やベトナム戦争などの神風が吹いた事は否定出来ないが、最大の功績は、訓練された良質で豊富な「人口」であった。大前研一氏はその著書のなかで「産業の変化は資源の意味も変え、自然資源より付加価値生産性の高い人口が真の資源になってきた」と優良な人口の重要性を強調している。

現在の人口減少問題の深刻さは、数の問題より日本人の質が時代の要請にマッチしていない事である。日本人の質が時代の要請とミスマッチを起している事は、80年代まで世界のトップクラスであった生産性が、今や世界の先進国の最下位レベルに転落したことでも明らかである。

問題は質の劣化に留まらない。国内でも労働力の需要と供給のミスマッチが起こり、一方で人不足、他方は就職難と言う現象が恒常化している。この事自体は、個人の職業選択の自由が実現したと言う意味で喜ぶべき現象であるが、自分で選択した不就労を、失業と誤解して公的資金で補助する事は厳禁である。これが横行すれば、社会全体が衰える事は、大失敗した北欧のモデルを参考にするまでもない。

社会、文化の発展と共に教育期間が増し、就労時期が遅くなる事も当然である。逆に言うと、今の大学卒は昔なら高校卒だと考える方が正解であろう。又、先進国の就労時間は急速に短くなり、有給休暇は増える傾向にある。週30時間労働の時代が来るのは眼と鼻の先である。移民受け入れ一つとっても、優秀な移民の確保には、日本のインフラの遅れは悲劇的である。

職業に貴賎は無いが、付加価値の差は否定できない。教育を受ければ受けるほど、高収入で楽な職業を選ぶ競争が激化するのは、人種、国家を超えた当たり前の現象である。だからこそ、欧米先進国では介護要員やお手伝いさん、食品やレストランなど、国内では人気の無い産業に多くの海外移民を迎えいれて、国民の豊かな生活を保障してもらっているのである。

過去50年間に、世界では2億人近い数の人が移民をし、その内1億2千万人は発展途上国から先進国への移住であが、先進国で唯一日本だけはこの流れから離れている。

移民問題にはプラスもマイナスも無数にある。移民の国と言われる米国でも、常に人種、宗教が絡んだいざこざは絶えなかった。(現在、米国を2分して争われている移民問題は、反移民と言うより、南米からの不法移民の大群とテロを恐れる回教徒に対する反感が強く、フィリピンからの介護者移民などは、家族にも移民ビザを発行するサービスぶりである)。

ましてや、移民に慣れない日本では、心理的な抵抗も多いであろう。移民が持ち込む疾病問題も無視出来ない。次は犯罪である。そして、日本人には馴染みの無い生活慣習の持ち込みも、ゴミの処理の仕方一つとっても、倫理や価値観を崩すと言う論議も起きてこよう。移民相手に日本人が犯す人権侵害犯罪の増加とその対策も用意する必要がある。

何処の国でも、組合は給与の圧迫要因になるとして反対する。低賃金で子沢山の移民が増えると教育や保険など社会的費用が増大し、税負担が増えると反対する向きも多い。宗教の違いも無視できない。

この様に.移民の受け入れには、多くの問題はあるが、働く人間を増やさずに借金の返済と年金問題を解決し、国民の「安心、安全」を確保する方法はあるのだろうか?私の答えはノーである。

大前研一氏の「日本は世界一富める国になった。しかし、世界から袋だたきにあい、個人は少しも豊かではない。戦後40年のすべての矛盾をイッキに打破し、国際社会の一員として真に豊かな国家を実現する衝撃の政策が求められている。国が豊かになることを目的にいままでの国富論は書かれていた。新しい国富論は『その中に住むすべての人々が豊かな生活のできるような国』をつくる為には、働く夫人が安心して子供を養育でき、子供の高等教育(大学院以上の専門教育)が可能で、老後の父母は勿論、自分の老後にも安心できる社会が必要である。年金借金の支払いには『収入を伴う現役』を増やす他方法はない。」と言う言葉は正にその通りである。

日本の行政は、弱い産業を保護する事で、国民の一部に恩を売り政治的な力をつけてきた。今の世界は、弱い産業ほど自由化する事で力をつける時代である。中でも、農地規制の撤廃と経済の自由化は喫緊の課題である。この政策を補完する為にも、移民の受け入れは必須う条件である。この様な規制の緩和と自由化で、土地の価格は下落し、内需は拡大され、農業、水産、林業は跡継ぎの心配からも解放され、「匠」として働き手を指導する事で高付加価値を生産する立場に立てる。

日本人が豊かな生活をするために必要な、保育園、幼稚園、介護士から水産、農業、林業、レストラン業、小売を中心とした流通業、土木などから家政婦にいたるまでの諸産業は、ドイツや米国にある契約移民の導入など、適正な移民政策を採用する事で再生される事は間違いない。

一番心配されるのは、同じ日本人の血を引く日系ブラジル人に対する冷たい処遇に見られる、日本人の偏見である。日本人は「懐が豊かになるに従い、心が貧しく」なってしまった。これまで「人も物も出す事」ばかり考えてきた日本の行政も、今後は「人も物も受け入れる」事に転換しなければ日本の未来は無い。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑