シンプルさを失うTwitter、排他性を失うmixi - @ogawakazuhiro

Facebookが日本でのシェア拡大に成功するかどうかについての議論が、さまざまなところで聞かれるようになりました。
我々が現在インターンの募集を定期的に続けていることもあって、大学生と会話をすることが多いのですが、Facebookを登録しているが、まだあまり使っていない、という学生が結構な割合で増えていることを実感しています。
登録していても使わないなら仕方ない、と一瞬思うでしょうが、いったん登録さえしてしまえば、さまざまな形でネットワーク上でのさまざまな誘いがプッシュされてくるのがFacebookの特徴です。徐々に使い方にも慣れ、アクティブユーザーへと成長させられていくだろうと考えます。

Facebookは、構造的に非常にスティッキーな(粘着性が高い)サービスです。いまやTwitterやmixiなど、日本人にとっては先行して普及したソーシャルネットワークサービスにとっては、大きな脅威であることは間違いありません。


Facebookは、見方を変えると、Twitterとmixiの中間的な機能を持つサービスです。ウォールとニュースフィード(前者は自分の情報を友達に見せるもの、後者は友達の情報を見るためのもの)というFacebookの基本サービスは、Twitterのタイムラインに似て、時系列順に短いテキストを中心としたデータのストリームを表示します。
同時に、mixiの日記に似たノートという機能を持ち、双方の合意なくしては成立しない友人関係を基本のサービス構造としています。

その意味で、Facebookはハイブリッドなサービスであり、意地悪な言い方をすればコウモリ的なソーシャルネットワークであると言えるでしょう。

しかし、彼がそのハイブリッドな状態をいきなり作ったわけではなく、数年にわたる成長の中で徐々にその姿になってきたため、結果的にはTwitter的な要素とmixi的な要素を併せ持つことで、その競合サービス群に逆プレッシャーをかけることができるようになっています。

つまり、リアルタイムで短い文章を気軽にアップする、という機能において、TwitterではなくFacebookを日常的なツールに使うようにユーザーを誘導し、親しい友人との濃度の高い人間関係を作りたい場合にもmixiではなくFacebookに置き換えてもよいのではと思わせるようになってきているのです。

その結果、Twitterとmixiは、それぞれが妙に慌てさせられることになりました。Twitterは急速にマルチメディア化し、サービスを高度化させはじめています。新しいUIを、僕は嫌いですが、皆さんはいかがでしょう?垂直に情報を流すだけなサービスだったTwitterが、横にスライドする複雑な構造を持つWebサイトに変貌しています。これは僕には悪い兆候に思えます。

mixiはどうでしょう?
実名制を徹底するFacebookが”リアルな”ソーシャルグラフを訴えれば、ニックネームが支配する半実名・半匿名のmixiのソーシャルグラフは意義を失ってしまいます。ならば自分たちも実名制のリアルなソーシャルグラフを提供しようと焦れば、既存のユーザーからの反発を買い、逆に匿名のバーチャルなソーシャルグラフにフォーカスすれば、GREEやモバゲーの100%オンラインだけで成立するバーチャルなソーシャルグラフとの差別化が難しい。mixiは完全紹介制によってユーザーがリアルな存在であることを担保してきましたが、いまやその保証もなくなりました。完全紹介制という排他性がmixiの強みだったのですが、日本最大のSNSの地位を得たときに、さらなる拡大のためにはその排他性が邪魔になった。しかし、今度は実名と匿名、リアルとバーチャルというどちらのカルチャーにフォーカスするかを決められないままに、一心不乱にリアルなソーシャルグラフの成長を押し進めるFacebookという黒船との競合にさらされてしまっているのです。

Facebookは最近、匿名のユーザーに実名を表記させるよう強制し始めています。いやなら止めろ、と言わんばかりです。5億人以上のユーザーが、その結果いったん4億人に減ってもいい、そう思っているのでしょう。

ハイブリッド化し、実名にこだわり抜き、リスクを恐れずにそれらを徹底するFacebookは、類似サービスを提供する競合他社に激しいプレッシャーを与えつつあります。

Twitterはシンプルさを失いつつあります。mixiは自らの強みを捨て、排他性を失いつつあります。それは明らかにFacebookのプレッシャーに抗するための動きの結果です。それらが正しい施策なのか、それともFacebookの思うつぼになるのか。

その答えは2011年中にも明らかになることでしょう。

コメント

  1. macume より:

    日本人には、mixiは「駆け込み寺」として必要です。Facebookの後追いしても仕方がないです。

    後追いして真似ていては差別化がどんどん難しくなるでしょう。ニッチな国内市場で、トップに維持・発展につとめた方が賢明だと思いますが。

  2. つくも より:

    どうでしょう?
    外国人と普段からメール等のやりとり
    をしていてfacebookに誘われました。
    日本人に合うサービスかというと疑問です。
    個人的にはfacebookを多用していますが
    周囲の日本人の友人はまだまだmixiユーザー
    が多いようです。。。

  3. decosu より:

    SNS利用においても、日本人の中で格差が生じているということでしょう。
    実名制のFacebookでメリットを享受できる勝ち組(リア充)と、実名ではネットを使えない多数の負け組みに分かれていき、住み分けが始まる予感がします。
    もしかすると、我々は、日本における階層社会の再形成を目撃しているのかもしれません。