強すぎる参議院をどうするか - 『参議院とは何か』

2011年02月20日 13:26

参議院とは何か 1947~2010 (中公叢書)参議院とは何か 1947~2010 (中公叢書)
著者:竹中 治堅
中央公論新社(2010-05)
販売元:Amazon.co.jp
★★★★☆


民主党政権が連立工作に失敗し、予算関連法案が否決される見通しが出てきた。首相退陣論が党内にも出る一方、首相は解散・総選挙をちらつかせて反撃し、政治はほとんど脳死状態だ。この原因が衆参の「ねじれ」にあることから、参議院とは何かが改めて問われている。本書は昨年の参院選の前の本だが、この問題を考える参考になるので紹介しておこう。

参議院不要論は昔からあるが、かつての論拠は衆議院のカーボンコピーだからというものだった。しかし最近では、ねじれを引き起こす強い参議院が問題とされる。本書はこの二つの見方を検証する形で終戦直後から現在に至る参議院をめぐる多くの問題を検討しているが、著者の結論は後者である。

吉田内閣のころには自由党が参議院で過半数をもっていなかったため、たびたび法案の修正を強いられ、参議院は「内閣の鬼門」と呼ばれた。保守合同のあと80年代までは「カーボンコピー」の時代が続くが、自民党の中でも参議院は独自性を発揮し、その主張(特に業界団体の既得権)を反映して法案があらかじめ修正されることが多かった。

1989年の参議院選挙で社会党が圧勝したあと自民党は過半数を失い、政治の混乱が続く。これを解消したのが小泉内閣で、郵政選挙で与党は衆議院の2/3を取ったが、それでも参議院のドン、青木幹雄氏は強い発言力をもっていた。そのあとの安倍・福田・麻生内閣がそれなりに安定していたのは2/3があったためだが、それも民主党政権では失われ、参議院が強い拒否権をもつ結果になった。

参議院は、衆議院を牽制して多様な民意を反映するという本来の意味より、政争を複雑にして既得権を強める役割を果たしてきた。これを改めるには、憲法を改正して衆議院が法案採決でも優越するように変える必要があるが、それはきわめて困難なので、公職選挙法の改正で実害を減らすことが現実的だろう。

著者は参議院の選挙区をブロック別の大選挙区にして、比例代表を廃止することを提案しているが、これではねじれが解消する保証がない。私は衆参同日選挙を制度化するように提言したが、同様の制度はアメリカやイタリアなどにもある。いずれにせよ参議院の改革は、迷走する政治を建て直す上で最優先の課題である。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑