国債暴落説を俯瞰する - 鈴木和夫

2011年02月28日 12:00

最近、新聞やビジネス誌で日本国債が取り上げられています。1月半ばに国債の格付けが一段下げられたことがきっかけになったと思います。内容は国債が暴落するかどうかを専門家に聞くスタイルがほとんどですが、暴落説に傾く識者の数が少しずつ増えているような気がします。政府の財政再建への意志は感じられず、政争に明け暮れる民主党の報道が伝えられると、誰しもが深い失望感に襲われるのではないでしょうか。


実は、わたしは今年から金融の専門家、さらに企業経営者まで、日本国債が暴落するかどうか質問することにしています。その結果、驚くことは、専門家、経営者といわれる人のいずれもみな「いずれ暴落するだろう」「3年以内に起きる」、外資金融マンに至っては、「妻の海外口座で通貨を移している」などすでに重い口からひねり出す言葉としてではなく、あっけらかんと日本国債暴落を確信して話すことでした。

ここでは国債暴落説を俯瞰することから論を進めます。まず国債の暴落への予兆ですが、まとめると次のようなことが考えられます。

<国債価格下落の予兆>

  • 長期金利の上昇
  • 貯蓄率の低下、経常収支のマイナス
  • 格付け会社の格下げ
  • 経常収支の赤字、有効な財政再建を打ち出せない政府の弱体化

国債価格の変動については、次のように専門家の意見を分類できます。

  1. 政治主因型(政治リスク指摘)
  2. 財政主因型(仮説検証データ、財政分析)
  3. 警鐘型(海外からの指摘)
  4. (1, 2は連動していて、政治リスクを指摘することで、財政再建できるかを問題とする論が多い。3は海外の専門家の指摘で格付け会社を含む。)

<立場上の分類>

  1. 分析者、コメンテーター (アナリスト、エコノミスト、学者)
  2. マスコミの商業的目的 (新聞、書籍、雑誌)
  3. JGB大量保有者(金融機関) 一般投資家
  4. (1はマスコミの注文原稿やコメントに対応して、回答する。2はビジネス雑誌などの商業的販売目的で暴落記事を特集する例が多い)

<世代別の分類>

    A  収奪される世代 30代以下
    B  中間世代 40-50代
    C  収奪する世代 60代以上
    (世代間による大雑把な分類であるが、今後、なすべき大手術をすべきと、Cの収奪世代が財政再建を受け入れる決断できるかが、国債暴落を防ぐ手立てと考えられる)

ポルトガル国債が日本の将来か

最近、ポルトガル10年物国債の利回りが7.5%を超え、ユーロ導入後の高水準に上がり価格は下落しています。市場の不安感が高まっているため、緊縮財政や増税による景気悪化も警戒されています。価格が下落し、利回りが高くなった後では、国債利回りが上昇中の段階では、火に油を注ぐような重税政策しか、打てないことがわかります。

こうした大きな問題でありながらファイナンシャルプランナーと名乗る人からの処置の仕方、心構えなどは、あまり聞こえてきません。また、JGB大量保有者(金融機関)もその声が同じく発していません。その理由として考えられるのは、同床同夢だからではないでしょうか。つまり、これまでの顧客が暴落予防のために外貨預金などへ走られたら、彼らの利益チャンスが薄れるからです。

国内金融からも国債暴落の危機については、あまり聞こえてきません。金融資産の棄損が大きいため考えたくもないのでしょうか。特に保有高の多いゆうちょ銀行やメガバンク側から、きちんと検証し、金融機関全体としてしっかりとした国への提言をする必要があるのではと思います。

臨界点でメルトダウンか、創造的破壊待望論も

一部の専門家の間からは、「崩壊したほうがよい。すでに国債暴落についてはあきらめている」という意見も多いのです。臨界点でメルトダウンか、創造的破壊待望論もあるのです。この背景には膨れ上がる官僚組織、相変わらずの天下り組織システムを変えることは、今の政治では不可能で、メルトダウンでお金という血流が止まり、特殊法人などの天下り組織が創造的破壊するから良くなるという意見もあります。

しかし、創造的破壊待望論は高まった期待値の頂点に過ぎない机上の空論で、過度の期待よりも、国債価格の下落により、激しい資産価値の棄損と金融システム崩壊による企業倒産、大量失業、低賃金による自己破産者の増大が、創造の前に立ちはだかると思います。

3月に自民党の一部議員による日銀ヒヤリングなどがまとめられ、発表される予定で内容によっては、大きく取り上げられ、国債の下落と財政再建への気運が高まるかもしれません。

●今回のポイント

    ・ほとんどの日本人はもしかしたら暴落覚悟
    ・ヘッジファンドが狙う国債暴落
    ・痛みを伴う財政再建政策で60代以上のコンセンサスを得られるかがカギ

(鈴木和夫 ジャーナリスト MBA diploma)

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