大学へ多様すぎる入学手段で正当性が保てるのか

石川 貴善

大学の定員割れだけに限らず学生数の確保から、ここ10年ほどで大学への入学方法が極めて多岐にわたるようになり、かつての受験競争のように「ペーパーテスト一発勝負」ではなく、私立有名大学でも下記のように極めて多岐にわたる方法となっています。


アゴラ-3

こうした方法のメリットは
(1)受験生が減少し、大学側も通常の入学試験だけでは受験生の数・質などが以前ほど読めなくなっているため、早い段階で一定のクオリティに達している学生を確保できる。
(2)一芸入試で芸能人などを入学させると受験者数の増加することだけに限らず、OB/OGで有名になり、大学のイメージアップと宣伝効果が期待できる。
(3)すでに定員割れになっている大学も少なくないため、事前の推薦などによって定員確保や授業料などの見込が立てやすい。
(4)推薦入学を増やし一般入試枠を減らすことで相対的な競争率が高まり、偏差値が高い状態をキープできる。
(5)受験生の側も、負担が軽くなる。

などといった面があります。逆にデメリットとして

(1)大学生の学力低下の一因に。
(2)同じ大学に一般入試で入試入学した学生と、隔たりが生じる。
(3)特に付属校からの進学組が多い場合には、校風・ネットワークの違いなどから壁が生じやすい。
(4)特に推薦入学の場合には、高校からの調査票がベースとなるため、内容や基準などが出身高校によってばらつきが大きい。
(5)付属校による進学や編入学は、学校の方針によって「最低限の学力で大学に上げる」か「ある程度厳しく選別するか」で分かれてしまい、実質的な「抜け道」になっている。
(6)特に早慶クラスになると、大学入試を避けた付属高校以下に早い段階から受験することによって受験戦争から逃れられるため、前段階で競争が激化してしまう。

などといった面が挙げられます。また推薦やAO入試などがいわゆる早慶レベルまで入り込んできていますので、「分母が減って依然として厳しい一般入試」と、「よく分からない基準のまま、大学に行ける推薦や内部進学」の二極化が進んでいると言えるでしょう。

こうした矛盾は、就職の際に企業の側でフィルタリングを行う場合、「付属からなので、少しマイナス」と実質的に補正していますが、あまり論理的な正当性がないことは確かです。

本来ですと世界的な傾向でもある「入学は易しく卒業が難しい」のが望ましいですが、入試の段階で変えることが出来るのは、多面的な試験方法で本当の実力を問うことでもあります。今までの試験方式は「いかに効率的に選別にかけるか」の一点でしたが、多面的な角度から選択・必須を取り入れていくことが欠かせないでしょう。
主な例として、(1)マークシートによる選択(2)通常の試験問題(3)小論文(4)口頭試問のほか、(5)試験は朝から夕方までかけ、パソコンや資料持込み可として、課題に対する解決能力を問う方法で、そもそも(3)以降の選考のようにそもそも他人から聞いても意味のない方式にしていくことも一策です。

コメント

  1. sumstation より:

    しかしいくら多様な入試手段があっても、企業の評価方法が多様でなければあまり意味がないとおもいますけどね。

  2. yieldcurve より:

    1試験においてクオリティを保つため
    入試問題を変更するのは高校生の基礎学力を保つ上でよくない。従来型試験をもっともっと負担のあるものにすべきでしょう。

    旧共通一次試験時のように、
    英数国理社各200点、合計1000満点、
    プラス、2次試験は文系でも数Ⅲまで必須方式ですね。
    もちろん全私大・短大も必須必須です。
    試験は競争試験の前期一本のみ。

    また今では旧帝国大レベルでもAO入試、推薦入試、
    それから3年次の編入が花盛りです。これらは廃止すべき。

    さらには大学院重点化大学にありがちな、
    ほぼフリーパス、学歴ロンダリング者ばかりの「専修コース」の廃止。
    また学部入学に際する早慶の学内推薦も禁止。
    これらで日本国の大学全体のレベルアップが図れるでしょう。クオリティも保てる。

    2定員について
    他方で現行の大学定員を5割削減、大学をつぶすのは大変ですので。これを守れない大学は次年度の募集禁止。
    補助金もゼロ。

    東大が学部定員1500人、京大が定員1000人、以下続く…
    のように昔の定員に戻すのも一案です。

    3次にクオリティを保った上でのレベルアップ方法
    高校生から選抜する場合、多様性は必要ない。
    文理の選択を大学入学段階で行ってはいけない。
    そして「入学は難しく卒業も難しい」型の選抜に変更する。

    専門への分化は大学院レベルでよい。

    以上を行えば、
    飛躍的にクオリティがアップすると思われます。

    4このうち、一番簡単な方法
    昔のように
    東大が学部定員1500人、京大が定員1000人にする。
    実際のところ、これだけで、
    日本の大学のクオリティは保たれるでしょう。

    上からのなだれ現象が起こるとともに、底辺大学のレベルが今のマーチ関関同立レベルに上がる。
    全大学の総定員を半分にすれば就職率はかなり改善する。

    あぶれた、現在のマーチ関関同立を含めそのレベル以下の人は高校卒業後すぐ働いていただきましょう。