放射能という「超自然」 - 『スーパーセンス』

2011年03月20日 11:41

スーパーセンスー ヒトは生まれつき超科学的な心を持っているスーパーセンス ヒトは生まれつき超科学的な心を持っている
著者:ブルース M.フード
インターシフト(2011-02-18)
販売元:Amazon.co.jp
★★★★☆


原発事故をめぐって、センセーショナルな報道が続いている。広瀬隆氏は「メルトダウン」で東京が放射能に汚染されると喧伝し、AERAは「放射能がくる」という特集号を出してパニックをあおっている。彼らには気の毒だが、福島原発には冷却水が入り、状態は安定に向かっている。

放射能がこれほど恐怖をかき立てるのは、日本の伝統でいうケガレに通じるものがあるからだろう。これは日本だけではなく、死についての禁忌は多くの文化圏にある。本書では、あるセーターを見せて「これを着た人に賞品を出す」というと多くの手が上がるが、「このセーターは殺人鬼の着たものだ」というと誰も手を上げなくなるという実験を紹介している。もちろんこの話は嘘であり、かりに事実だとしてもセーターを着ることによる実害は何もないのだが、人々は死を連想させるものをきらうのだ。

このように現象の背後に超自然的な本質をみる傾向を、著者はスーパーセンスと呼ぶ。多くの災害は人々に理解不可能なものだが、それは悪である。したがって悪い出来事の原因として神などの本質を想定し、災害を「天罰」と考えるのだ。このような迷信は、東京都知事にもみられる。

理解できない出来事の背後に超自然的な本質を想定する本質主義が宗教を生んだ、と著者はいう。神をもたない宗教はあるが、悪魔をもたない宗教はない。その根源には、悪魔=外敵に対して境界線を引くことによって集団を結束させる心理的メカニズムがあるのだろう。今回の地震は、この意味で日本人を結束させる効果をもつ。

放射能はケガレが科学の装いをまとったもので、その大部分はデマである。人体に影響する放射性物質が残留するのは原発の半径数km圏内に限られるだろうが、政府が「すべて安全だ」というと人々はかえって警戒する。むしろ「2km圏内は居住禁止。野菜も出荷禁止」といった規制を行なって「線引き」をしたほうがよい、というのが本書の実験から得られる教訓である。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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