首相は被災地に行くな

2011年03月21日 09:56

菅首相が震災の被災地の視察を取りやめた。「悪天候のため」と発表しているが、枝野官房長官も記者会見で認めたように、政府内でも「賛否両論」あるからだろう。きのうの官邸の発表に私が「被災地の迷惑」とコメントしたら、被災地から「やめてほしい」とか「救助活動のじゃまになる」といった多くの声が寄せられた。インフラも復旧していない状態で、首相のアテンドに自衛隊の貴重な労力をさくべきではない。


これまでも首相の「現場主義」は百害あって一利なしだった。最大の失敗は、原発事故が起こった直後の12日朝に、ヘリコプターで福島原発に乗り込んだことだ。一刻を争うときに現地スタッフの時間を浪費した結果、冷却水の注入が遅れ、建屋を吹っ飛ばすという致命的な失敗の原因になった。

15日朝に東電に乗り込んで「このままでは東電は100%つぶれる」などと3時間にわたってどなり散らしたことも、貴重な時間の浪費だった。この段階では、もう危機管理の責任は東電ではなく政府にあったのだから、首相のやるべきことは官邸で指揮を取ることであって、むやみに前線に乗り込んで騒ぎ立てることではない。

首相はリーダーシップの弱さを派手なパフォーマンスで補おうとしているのだろうが、「政治主導」の意味を取り違えている。彼はしきりに「決死の覚悟」とか「命がけでやっている」とかいうが、総指揮官の仕事は命をかけることではない。物理的な作業は官僚機構にまかせ、首相は落ち着いて全体の指揮に専念してほしい。

戦争や災害のときは、総指揮官となる大統領や首相への支持が高まるものだが、今回は首相の見当はずれのドタバタに国民は白けている。彼が現地に乗り込んで騒いでも、人気は回復しない。被災地へ行くのは、状況が落ち着いて現地から招待されてからでいい。彼にはまともな判断能力がないようなので、官邸スタッフがしっかりして危機管理にあたってほしい。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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