無線LANの出力拡大を急げ

2011年04月04日 20:38

大震災当日は歩いて帰宅した。歩道を埋めた人々の中には帰宅難民になった方々もおられたが、彼らはどのようにして情報を入手していたのだろうか。東京都は体育館や学校を開放したが、その情報はきちんと伝わったのだろうか。

首都圏では基地局の倒壊も電力供給のストップも起きていないのに、携帯電話はまったくつながらず、公衆電話にも長い行列ができていた。トラフィックを規制していたからだ。ワンセグは、当然ながら、被災地の情報が中心だった。カフェなどに設置されたホットスポットに行けばネットを利用できたが、歩いている途中では無線LANはつながらない。

アメリカでは、大都市だけでなく中規模な都市にも、都市エリア全体をカバーする無線LANがある。公園でiPodなどの携帯情報端末を使っている人々をよく見かけるが、彼らはそんなエリアサービスを利用してネットにつながっているのである。無線LANを搭載した機器が広く普及してきているのに、なぜ、わが国には都市エリア全体をカバーする無線LANがないのだろうか。なぜ、ホットスポットでの提供に留まっているのだろうか。


理由の一つに無線出力制限がある。エリアサービスを提供するためにはアクセスポイントを面的に配置する必要がある。アクセスポイントの所要数は無線出力に反比例するが、アメリカよりも小さな無線出力しか許されていないので、アクセスポイントが余分に必要になり投資額が増える。そもそも一つひとつ設置許可を取るにも手間がかかる。アメリカの通信事業者は携帯電話と無線LANのエリア接続を相互補完するサービスとして提供しているが、わが国では、エリアサービスは採算が合わないので、そんなサービスがない。

総務省は問題を認識していて、無線LANなど免許不要局の最大無線出力を1ワットまで拡大できるように、2010年11月に電波法を改正した。そして、大震災直前の2011年3月4日に研究会を立ち上げ、実際にどの程度までの拡大を認めるか検討を開始したところである。

この研究会方式での検討というのが曲者である。無線LANの出力を拡大すると気象レーダなどに干渉する恐れがある。そんな慎重派の主張も考慮する必要があるので、絶対に、確実に、間違いなく干渉しないレベルまでしか規制は緩和されない。「絶対に、確実に、間違いなく」と言葉を重ねたのは、今までも同じ事情で、ほとんど起きるはずもない状況まで想定して過剰な出力制限や利用制限が掛けられてきたからだ。だから、今回の大震災には間に合わなかった。アメリカでは何年も前から、大きな出力の無線LANが、もっと自由に利用されているというのに。

無線LANの規制緩和は多くの社会的利益を生む。利用者はエリアサービスを利用できるようになるので、そこから新しい利用シーンが生まれていくだろう。無線LANの機器メーカは、国内用と輸出用とで設計を変える必要がなくなるので、輸出に力が入る。アメリカの無線LAN機器を個人輸入するといった、電波法違反の裏技も不必要になる。

今回の大震災を教訓にするのであれば、無線LANをもっと利用しやすくするべきだ。そして、中期的には、電波社会主義と揶揄されるほど保守的な総務省の電波規制の在り方を抜本的に見直すべきである。

山田肇 - 東洋大学経済学部

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