電力危機を回避するために今すべきこと - 佐々木 太志

2011年04月06日 11:26

現在の予想によれば、東電管内において今夏の電力の需給ギャップは1000万KWにおよぶとも言われている。また、この電力の不足は数年以上に渡り継続するとも言われる。経済界では業界ごとに輪番操業を計画しているとも言われるが、果たしてそれだけで夏冬の需給ギャップを解消できるのか。
製造、流通、販売までの一貫したSCMの維持という観点からも実効的な合意は難しいだろう。また、仮に長期に渡り経済界に全てのしわ寄せを行えば景気の悪化が家計にも影響する。

では、一般家庭の節電努力でギャップを解消できるか?ただ努力に頼るだけでは困難だろう。今夏、おそらく節約疲れが出てきた頃に冷房シーズンがスタートする。仮に昨年のような猛暑であれば冷房なしでは乗り切れない可能性が高い。熱中症による死者が相次げば尚更だ。


どちらにしても言えるのは、危機を前に痛みを分かち合うべきという考えは、初動期には有効(というか、それしかない場合も多い)だが、長く継続する危機の前では逆効果になるということだ。危機に際して「欲しがりません、勝つまでは」的な思考を取り続けると、経済は縮退し、全ての国民が長い痛みを味わう。需要を可能な限り満たし、その対価にて供給力を伸ばすような方策を考えるべきだろう。
この際、対価としてはお金以外の貢献の方が重要だ。インカム(=電気料金)を上げても、それを使うべき施策がない。原発を建てる建設費がないのではなく、もはや原発の新設を受け入れる立地がないのだ。

多くの一般消費者が、商用給電の対価として金銭以外の貢献を支払うとすれば、まず考えられるのは太陽光発電の設置だろう。消費者は、太陽光パネルの設置コストを負担し、余剰電力の売電により地域の電力供給に貢献する。ところが太陽光には昼間しか発電できないという制約がある。このため夜間電力を安定的にまかなうための施策が必要だ。

私が提案をしたいのは、現在は制度がないガス発電由来の電気の購入を東京電力に義務づけることだ。ガス発電であれば昼間夜間を問わず稼働が可能となる。安定した供給源であるが故に、地域毎に供給可能な電力を統計的に計算することも可能だ。
同時に、現在のガス発電機(エコウィル/エネファーム)の小改良版を発売する。

その設置については基本的に消費者の負担とし、国や自治体から補助金を出す(これまでの制度をそのまま用いる)。発電に必要なガス代は、太陽光の場合と違い、売電量を元にガス会社と東京電力の間で直接精算するべきだ。家庭用ガス発電機なら土地買収も不要だし、工事は3日もあれば完了する。今年の夏には間に合わなくとも、今年の冬にはかなりの戸数で稼働を始められる筈だ。

万が一、地域のガス発電機をフル稼働させても電力が不足する場合には、残念ながら計画停電を実施するしかない。しかし、ガス発電機を持つ家庭は自家発電により停電を免れる。万が一の停電対策として家庭用ガス発電機を進んで導入する消費者も多い筈だ。

このガス発電機には通信ユニットを付けることが望ましい。そうすれば、サーバから遠隔でガス発電機を稼働させることができるようになり、電力の需給を見ながら制御することが可能となる(再度述べるが、そのガス代は電力会社に負担させる)。
最初は原始的な制御しかできないかもしれないが(例えば14時~20時のピークは全て運転、など)、制御を進化させれば、そのままスマートグリッドに移行することになる。例えば、地域の電力が足りないときは、貯湯タンクのお湯の量が少ないガス発電機から優先的に稼働させる。それでもなお電力が足りなければ、貯湯タンクが満水の家庭の発電機をサーバから稼働させることもできる。電気やお湯の需要を見ながら、最も効率の良い運転が可能となる。

スマートグリッドはまだ日本では本格的な検討が進んでおらず、おそらく、今回の事故がなければ、既得権益者たる電力会社の反対により当分は足踏みを余儀なくされただろう。が、状況は一変した。東京電力が健在であれば実現不可能な案も、今なら検討し、実現することが可能だ。その最初の一歩として、政府、ガス会社、および発電機(コジェネおよび燃料電池)のメーカーには、次の実現を早急に望みたい。

1. 停電時でも内蔵バッテリで起動が可能であり、貯湯タンクの水量によらず稼働させられるガス発電機の小改良
2. ガス発電機の管理のための制御システム、ネットワーク、プロトコルの検討
3. ガス発電機の電力を電力会社に購入させる法制度の検討

これまでガスと言えば災害に弱いインフラとの烙印を押されてきた。が、今起きているのは災害という言葉から想定されるような一過性の事態ではない。発電所などの大規模設備が不要で、家庭に直接届けられる一次エネルギーであるガスの利点を見直すことは、停電による不況を回避し、日本が復興に向けて歩むために必要不可欠だと考える。
(佐々木 太志)

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