東京電力は、今の日本のマネジメントや企業風土の鏡像である

2011年04月24日 08:07

すでにスマートグリッドや発送と配電の分離といったテーマが定着していますので、そうした制度設計の話とは別に、今回は社風や組織風土を取り上げます。連日記者会見などで見る光景に違和感を覚える方や、重厚長大型の企業にお勤めの方の中には「ウチと似ている」と感じることがあるかも知れません。


主な特徴として、
1)会長/社長はなかなか出てこない
→トップが出てくるのは、儀式として謝るか辞任するとき
2)次第に固定化しているものの、当初会見で出てくる顔ぶれが異なる
→個人に責任を負わせずリスク分散の仕組み
3)話を聞いていると、誰が決めているかわからない
→国の意向か、社内での合議かわからない
4)実業団選手や新入社員がブログやSNSで「悪くない」「嫌なら電気を使うな」と反論し、”炎上”する
→愛社精神の発露ですが、部門の違う社員は報道程度の内容しか知らない場合が多く、希望的観測で社会的に理解が得られない

ことが挙げられます。

筆者が気になったのは、2004年の柏崎刈羽原発の事故報告書がウィキペディアに掲載されていた内容です。話題になることを恐れ今は削除していますが、総じて組織風土の検証の箇所で「社員がものを言いにくい組織風土」「異常などを報告しにくい社風」から、風土改革の必要性を訴えていましたが、社会的地位や企業規模、地域独占で不祥事があっても経営が安定していることから、変えていく動機に乏しく実現は無理と見るのが妥当でしょう。

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柏崎刈羽の事故を機にした企業風土に関する内容は、削除されています。

1)社員がものを言いにくい→物申せば損をする
2)異常などを報告しにくい→何かあっても上司も知ったことから責任追及になり、「聞かなかったこと」になり、結果として隠す風土になりやすい
3)今までのロールモデルから、基本的に総務/企画出身の部門が力を持ち、現業部門は計画通りに実施することが善とされる環境
4)失敗事例に学ぶ習慣がない→建前で「失敗するはずはない」ため、自己暗示にかかってしまい経験知が生かされる機会がない
5)指揮統率能力が低い→2年前の柏崎刈羽におけるポンプ室火災の対策書類の中に、原因の中で「現場の状況把握や協力会社への指示など現場統率力の不十分さ」とあります。実際は協力会社任せで担当者は定期的に異動するため、リーダーシップの育ちようがありませんし、”安定”が唯一の動機の中でリーダーシップを取るタイプは新卒採用の段階で落とされるでしょう。

こうした中で、事務処理能力や調整能力が重視される風土では、非常時にあっても「予定調和の中で計画通りに動く」ことが求められ、計数管理や発電量の管理が厳しく、現場の状況や意向など無視されやすい風土が醸成されるのは無理からぬことでもあります。同社では社長を含め二世社員が多いため、外部から異様に感じても慣れれば帰属主義と一体感による心地よさが醸成されています。その要因として官公庁や大手メディアと同じで、”自社しか知らない”流動性が関係しています。

紐帯の強さと社会での相克は日本的企業で起こりやすいですが、消費者は「嫌なら買わない」選択により、業績などで収斂されていきます。今回の事故で東京電力が社会的な反発を招いているのは、地域独占で会社を選べないうえに、独占利益を各方面への工作やメディアへの影響力によって、特に「ウチの論理」がグロテスクな形で顕在化したのが今回の原発事故でもあり、その鏡像が強烈ゆえに国内外から嫌悪感を持って見られるのではないでしょうか。

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