昔のライブドアや昔の村上ファンドのようなプレイヤーが活躍できる株式市場こそが日本に必要

2011年04月28日 00:28

昨日、最高裁が上告棄却したことにより、ライブドア元社長の堀江貴文氏の実刑判決が確定した。経済犯罪―仮にそれが犯罪であったとしたら―としては、懲役2年6ヶ月という異例の重い量刑となった。筆者は個人的に堀江氏を応援していただけに、とても残念である。ライブドアが所有するファンドがライブドア株の売却でたまたま得た利益を売上に計上したことが、粉飾決算とされた。東京地検特捜部の主張は、これは資本取引であって、売上に計上して損益計算書をよく見せるのは粉飾決算だというのだ。事件の詳細などは、すでに本人の書籍ブログ、様々なメディアで報道されているので、ここでは触れない。筆者の感想は、量刑がむちゃくちゃである、ということである。


なぜ継続性に何の問題もなかった生きた上場企業に、東京地検特捜部があのような形で強制捜査に踏み切り、過去の粉飾決算での量刑相場からは考えられないような重い判決が堀江貴文氏をはじめとした、ライブドアの元経営陣にくだされなければいけなかったのか。確かに、ファンドを通してインサイダー取引が疑われやすい非常にデリケートな自社株の売買をしていたというのは、証券取引等監視委員会から何らかの調査の対象になっても不思議ではないし、行政処分の対象となってもおかしくなかったかもしれない。しかし、いきなりの強制捜査で、経営陣を実刑判決にして刑務所に送り込むようなことではなかった、と筆者は強く思う。全てが異例だった。

物言う株主として知られていた村上ファンドの村上世彰氏も、ライブドアのニッポン放送株TOBに関連するインサイダー取引の容疑で逮捕されてしまった。これも多くの識者が驚くような、非常に微妙な容疑だった。そしていつの間にか日本のマスコミのために、認定放送持株会社という制度が作られた。この持株会社になると、株主は3分の1以上の株式は保有できなくなる。フジテレビとTBSが認定放送持株会社に移行した。すべての株主が3分の1以上保有できないので、経営者にとっては完全な買収防衛策である。

ライブドアも村上ファンドも企業買収が大変得意だった。経営者が無能で、会社のリソースをうまく活用できなていなかったり、将来性のあるビジネス・モデルを構築できていない場合、株価は低迷することになる。そこでよりよい経営をできる自信があれば、その会社を買収して無能な経営陣を首にして自分で経営すればいい。その結果、会社の業績が上がれば株価が上昇して儲かるし、業績が上がらなければ株価の下落から損する。また自らが大株主になって会社の経営戦略に口を出してもいい。それで会社の業績が上がれば、自分も儲かるし、そうでなければ損するだけだ。ライブドアや村上ファンドが儲けることができたのは、日本ではこのような市場原理がうまく働いていなかったからなのだ。市場原理が働いていないから儲かっているのに、堀江氏や村上氏のことを「市場原理主義者」と一部の評論家が呼んでいたのは、何か悪い冗談のように聞こえた。

市場経済において、会社の業績を決めるのは会社の顧客だ。顧客を喜ばすことができない会社は淘汰されていくのである。会社の業務を回すために従業員が経営者に雇われる。顧客を十分に喜ばすことができない従業員は首になるし、顧客を喜ばし利益に貢献できる従業員はより高い報酬を受け取り、より高い地位に就く。従業員をうまく使い、顧客に喜ばれるような会社にすることができなかったら、経営者は危うい立場に追いやられる。そのような経営者を市場は常に監視しており、業績の悪化に対して株価は下落する。会社は株主のものであり、株主は無能な経営陣を抱えていたら株価が下がって大損するので、常に経営陣にプレッシャーをかけ、ダメなら交代させる。株主は市場から容赦なく審判を下される。この一連の相互監視の仕組みこそ、資本主義社会の支柱なのだ。このように緊張感のあるガバナンスにより、社会の貴重な資源が社会が発展するために正しく配分されていくのだ。そして経済成長が実現する。そのように経済的な豊かさを手に入れた社会だけが、弱者をいたわる余裕を持ち得るのである。

ところが日本では、いったんエスタブリッシュメントの側の高い地位に就くと、この相互監視から特権的に逃れることができるようなのだ。まさに特権階級である。そして司法も行政も、日本の大企業が次々に導入する買収防衛策や株式の持ち合いを容認し、時に自らも積極的にそのインナーサークルに取り込まれていった。そして日本の株式市場は、重要な機能を徐々に失っていった。このように新陳代謝しなくなった日本の株式市場は非常に魅力の乏しいものとなった。勝者はエスタブリッシュメントの側に立つ一部の人々だ。敗者はいうまでもなく多くの国民だ。日本経済が復活するために一番必要なことは、昔のライブドアや昔の村上ファンドのような、企業買収して経営に積極的に関わることができるプレイヤーなのだ。政府は、株式市場でフェアな競争が行われるように、そして、法律通りに株主の利益が守られるように、世界に開かれたプラットフォームを作らなければいけないのだ。

2年とちょっとの年月は長いようで短い。筆者は、また堀江貴文氏がもどってきて、何か大きいことをやってくれるんじゃないかと楽しみにしている。少なくとも、落ち着いて本を読む時間がたくさんありそうなのは、少し羨ましかったりする。

参考資料
ライブドア・ショックは今更ながら経済小説の100倍面白い現実に起こったドラマだ、金融日記
ホリエモンの損害賠償支払い理由がさっぱり分からない、金融日記
放送法改正によりメディア再編は進むのか、デロイト トウシュ トーマツ
セイヴィング・キャピタリズム、ラグラム・ラジャン、ルイジ・ジンガレス
M&A新世紀 ターゲットはトヨタか、新日鐵か? 岩崎日出俊

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