東北に訪れたイノベーションの好機を生かそう

2011年05月02日 12:23

危は機に変えていかなければなりません。東北の被災による打撃は、東北地方にとどまらず、日本全体に襲いかかってきていますが、たんにもとに戻すというのではなく、日本が本来目指さなければならないより付加価値の高い産業構造の転換にむかった進化の道も開かないといけないという議論も増えてきました。


業の進化をはかるのはイノベーションの力ですが、東北の復興にはイノベーションを起こさなければならない必然性が生まれてきています。農業にし ても、漁業にしても、また電力にしても、もはやこれまでの産業のありかたでは成り立たないからです。

さて、そこで重要なことがふたつあると思います。まずは、イノベーションは技術だけの問題ではないということです。もうひとつはどのようなイノ ベーションが起こってくるかは予見できないことです。

技術だけの問題ではないことでは、ドラッカーが、『イノベーションと企業家精神』で、明治時代の日本のイノベーションの成功を取り上げています。 技術では日本は欧米から取り入れ、また模倣したに過ぎなかったのですが、日本にとっては社会的イノベーションのほうがはるかに重要であり、そこに 資源を集中したことが日本の成長を生んだというのです。また社会システムは深く文化に根したものであり、技術のイノベーションよりもはるかに難 しいとも言っています。

零細で個人の単位で営むことが根ざしてきた農業や漁業といった一次産業の進化は、そういった長く根付いてきた習慣や文化が壁になってきました。事 業規模が小さいために、非近代的な流通に頼らざるをえず、極めてリスクの高い事業になってしまっています。それがゼロベースで新しい産業として再 生する機会がやってきているのです。

電力も大阪府の橋下知事が、新規原発計画の中止と施設の延長運営の差し止めを関西広域連合に提言されましたが、もはや日本で原発を推進することは ありえません。

なぜなら、日本の原発の信頼性がまったくなくなってしまったからです。国内で原発を推進することも海外に売ることも困難でしょう。原発に関して は、JAPANブランドは崩壊したのです。

いくら立派な施設を建設する技術はあったとしても、原発は燃料の確保から、その廃棄にいたる技術、さらに資本の手当から、安全運用にいたるシステ ムが総合されて成り立つものです。燃料サイクルを自前でつくる見通しもなく、また運用のシステムに致命的欠陥があり、また廃炉にいたる過程でフ ランスの技術支援を必要とすることは、はたして日本で原発を推進する価値があるのか、また海外にも展開する競争力があるのかも疑わせます。だから 自然エネルギー発電への転換の機会が生まれてきています。これまで原発を進めるために自然エネルギーの活用が犠牲になってきました。

ただ、いずれにしても、農業にしても、漁業にしても、電力にしても、どのようなイノベーションが起こってくるかは予見できません。資本が集まる、 技術が集まる、また市場を広がるといったイノベーションが起こりやすいしくみを準備するしかありません。

ひとつのイノベーションが起こると、イノベーションは次々起こってきます。そのダイナミズムも重要であり、それは競争が生み出します。

いかに人が将来を想像することに限界があるのかは、かつて日本の経済成長や都市の発展を象徴していたニュータウンに、その後なにが起こったかを見 ればわかります。

その開発した時点では完璧な街つくりと思われたニュータウンは、最初に入った商業施設での利権がまもられ、また規制を行ない、自然発生や新陳代謝のしくみ をつくらなかったために、その後の流通やサービス業の変化、また住民のニーズの変化に対応できず、どんどん住宅地としての魅力を失っていきまし た。結果として、どんどんゴーストタウン化していったのです。人の想像力には限界があります。

現在、自然エネルギーといえば太陽光だ、風力だということがあまりに強調され
ているように感じますが、どの技術が伸びてくるのかは、どのようなイ ノベー
ションが起こってくるかによって、変わってきます。

もちろん現在はエネルギー転換に非効率な太陽光発電にもイノベーションは起こってくるでしょう。シャープと東大で現在はエネルギー転換率が20% 程度のところを75%に上げる技術が発見されたようです。

太陽電池の変換効率75%に 東大とシャープが構造解明  :日本経済新聞 :

また、東北は地熱の資源が豊富です。現在は自然の森に違和感のあるプラントが建設される、あるいは観光施設の温泉への影響などの問題があります が、これらも課題がはっきりしており、イノベーションを起こす機会があるということです。その他のエネルギーでもなにが飛び出してくるかはわかり ません。

政府ができることは、農業や漁業では、まずは、どれぐらいの付加価値を生み出し、競争力をもった産業規模をめざすのか、そして付加価値を生み出す ための課題をあきらかにすることでしょうか。それが利益がでて魅力ある事業なら、資本も集まります。また電力では、自然エネルギー発電で世界一をめざすというぐらいのビジョンを示すべきで す。電力政策を大きく、また鮮やかに変えることは海外へのインパクトもでてきます。

それらは、いくら検討してもでてくるものではありません。日本がどう進むべきかの哲学の問題です。

この連休に国会中継がありましたが、ほんとうに日本の政治家には失望させられます。質問もこれまでよりも揚げ足取りは減ったと思いますが、未体験 な被災現場でなにがどの程度できるかは、実際にやって見ないことにはわからないことは多いはずで、目標を示して、予算を投入する、あとは各自治体 などの現場努力に任せるしかありません。さまざまな断片的な細かなことばかりの質問が目立ち、それなら、こういう構想、こういう工夫があるという建設的な提言の少なさには驚かされまし た。

たしかに菅総理にも問題はあるとしても、いや同じ穴の狢ではないかとすら感じます。もはやかつてのように賛成、反対でやりあっていればいい時 代ではありません。政治もハートと創造力を競う時代になってきたと思うのですが、古い文化や発想の殻から抜け出すことがいかに難しいかを見せつけられてい るように感じます。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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