「自然エネルギー」は原発の代わりにはならない

2011年05月25日 19:57

ソフトバンクは、19の道府県とともに「自然エネルギー協議会」を設立すると発表した。孫社長によると「全国の耕作放棄地や休耕田の2割に太陽電池を設置すれば原子力発電所50基に相当する5000万kWの供給力を得ることができ、天候による発電効率の低下を考慮しても全国の電力需要の20%をまかなえる可能性がある」というが、これは錯覚である。太陽電池をいくら増やしても、原発を減らすことはできない。


原発の1基100万kWというのは常に出せる出力だが、太陽電池の出力はピーク値である。これは雨の日はゼロになるので、電力設備としては当てにできない。原発は1日中稼働しているベースロードなので、これを削減するためには火力を増やすしかないのだ。

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図は1年中で電力消費が最大となる真夏の1日の電力需要の推移だが、このピーク値Pに合わせて設備投資が決まる。再生可能エネルギーの最大発電能力が5000万kWだとしても、設備投資はその最小発電能力で決まる。雨や無風のときは再生可能エネルギーはゼロになるので、火力+原発でPの発電能力を確保しなければならない。

したがって、いくら再生可能エネルギーが増えても、夏場のピークロードとして使えるだけで、原発のようなベースロードの代わりにはならない。100万kWの原発を減らすには、100万kWの火力を増設するしかないのだ。もちろん再生可能エネルギーの分だけ火力の燃費は減るが、原発を減らした分だけ燃費が増えるので、後者の影響のほうがはるかに大きい。東電の場合、福島と柏崎を止めただけで、今期の燃費は1兆円も増える。

だから「脱原発」をめざすなら、「メガソーラー」を建てるのは役に立たない。Pと1日の最小値の比を「負荷率」と呼ぶが、東電の負荷率は約60%ときわめて効率が悪いので、重要なのはPを下げることである。村上憲郎さんもいうように、デマンドレスポンスやネガワットといった技術によってピークを下げれば、最大で40%の発電所がいらなくなるのだ。

こうした節電技術の分野は大きな設備投資がいらないので、ベンチャーでも参入できる。来月のアゴラ起業塾では、そういうビジネスを紹介したい。重要なのは、補助金や自治体との「協議会」ではなく、こうした新しい企業が参入できる競争環境を整える電力の自由化である。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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