首相公選よりも、一票の格差を是正すべき

2011年05月28日 21:16

大阪府の橋下徹知事が首相公選制を主張している。世論調査でも、首相公選の支持者は多い。あまりにも何度も話題になるので、中曽根康弘元総理大臣は、首相公選論を「不死鳥」と呼んでいる。中曽根氏自身が首相公選制の試案を発表している。

首相公選制(リーダーを直接選挙で選びたいという主張)の根拠は3つあると思われる。

1.アメリカの影響

最大の同盟国であり、政治的影響が多大であるため、政治制度も模倣しようということである。アメリカの民主制が特に問題なく機能しているので、大統領制が優れているかのように考えられている。

2.首相のリーダーシップ強化

内閣と与党とに権限が分裂し、首相がリーダーシップを取れない状況に不満が高まっており、アメリカ型の大統領制がリーダーシップを強化するのではないかと思われている。

3.わかりにくい選挙制度と不平等な選挙への不満

衆参両院の選挙制度は、相当詳しい人でも正確な説明ができないほど複雑である。そればかりか、選挙における一票の価値の格差は、最高裁で違憲判決が何度も出ているのに、是正が行われない。このため、投票しても、国民は政治に参加したという気分になれない。首相公選なら、一票は平等であり、投票結果がダイレクトに政策に反映されるのではないかと思われる。

これらの論拠はどれも間違っている。


1.大統領制(元首と議会の二元代表制)が民主的に機能している国は、世界中でアメリカしかない。二元代表制である限り、元首と議会との間に「ねじれ」が生じて、政治がデッドロックに乗りあげてしまうからだ。軍政とクーデターが頻発する中南米やアフリカの惨状は言うまでもないし、先進国でアメリカ以外に純粋な大統領制を採る国はない。イスラエルの首相公選制は10年もたずに崩壊した。大統領制はアメリカの特殊な政治風土の下でのみ機能するのであり、制度だけを移植してもうまくいかないだろう。

2.制度だけからみれば、議会に基盤を持たない大統領よりも、必然的に議会の支持を得ている首相の方が、リーダーシップは強いはずである。日本の首相のリーダーシップが弱い理由は、中選挙区制や、内閣法や慣例にある。中選挙区制はすでに廃止され、小選挙区比例代表並立制に切り替わったため、問題は解決された。首相の権力を弱めている内閣制度の改革は、内閣法の改正で可能であって、首相公選は必要ない。

3.選挙制度が複雑すぎるなら、シンプルに作り替えればよい。一票の価値の不平等が不満であるなら、選挙区定数割りを変更すれば良い。首相公選などという大掛かりな制度改革の必要はない。

仮に、全国一選挙区で、比例代表制とするならば、議会選挙は首相の選挙そのものになり、実質的な首相公選が達成されるだろう。(ドイツのような、小党分立を防ぐ5%ルールはあってもよい)

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