再生可能エネルギー法案に反対する

2011年07月31日 18:42

民主・自民・公明の3党は、再生可能エネルギー買い取り法案の修正協議を行ない、今国会で成立させる方針のようだ。菅首相の退陣の条件になっているので、やむをえないのかも知れないが、条文を読むと、これはかなり問題の多い法案である。


まず肝心の買い取り価格(調達価格)もその期間も、経産省の「告示」で決まる。

第3条5項 経済産業大臣は、毎年度、当該年度の開始前に、電気事業者が再生可能エネルギー電気の調達につき、経済産業省令で定める再生可能エネルギー発電設備の区分ごとに、当該再生可能エネルギー電気の一キロワット時当たりの調達価格及びその調達期間を定めなければならない。

つまり買い取り価格が「経済産業省令」で決まり、それは「毎年度」改訂されるのだ。省令には国会の承認が必要ないので、再生可能エネルギー業界を生かすも殺すも経産省のさじ加減ひとつである。当然、ソフトバンクを初めとする業者は、買い取り価格を上げてもらおうと激しいロビー活動を展開し、天下り先もたくさんできるだろう。究極の「官僚主導」法案である。

この買い取り価格は、太陽光発電促進付加金として電気料金に上乗せされる。海江田経産相はこの付加金が「0.5円/kWhを超えないように運用する」と説明しているが、いま産業用の料金は13.8円/kWhだから、これは3.6%の値上げになる。それでも電炉業界では、経常利益の35%が吹っ飛ぶというが、この程度の値上げで収めるには買い取り単価は20円/kWh以下になり、太陽光発電は赤字になる。

だから本当に太陽光発電を普及させるなら、孫正義氏の主張するように「40円/kWhで20年固定」ぐらいにする必要がある。これならノーリスク・ハイリターンだから、海外から安い太陽電池を輸入して大量に設置するビジネスが流行するだろう。電力会社は全量買い取りの義務があるので、どんな劣悪な電力でも買い取らなければならない。

そのためにかかるコストは、電力の買い取り価格だけではない。太陽光発電による送電網や、それを安定化させる系統安定化コストは、500万世帯に対応すると15兆円以上かかると推定され、これも電気料金に転嫁される。首相のいうように1000万世帯に太陽光パネルを設置したら、電気代はデンマークのように2倍以上になるだろう。

ところが孫氏は、今週の週刊ダイヤモンドでは「電力自由化」を主張している。それが固定価格買い取りという統制経済と矛盾することに気づいていないのだろうか。それともソフトバンクだけは例外にして、電気料金が自由競争で下がっても「メガソーラー」だけは20年間ずっと40円で買い取ってもらおうというのだろうか。しかし残念ながら、この法案にはこう書いてあるのだ:

第6条 政府は、少なくとも三年ごとに、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるとともに、この法律の施行後平成三十三年三月三十一日までの間にこの法律の廃止を含めた見直しを行うものとする。

つまり2021年には、この法律は原則として廃止される。今は「脱原発」を掲げる菅政権が推進しているが、自公政権になったら、電力会社が買い取り価格を下げろとか買い取りをやめろというロビー活動をするだろう。かくして電気料金は利用者とは無関係に政治的な力関係で決まる。補助金を当てにしてメガソーラーを建設しても、スペインのように補助金が打ち切られたら、業界は崩壊してしまう。

こんな補助金に強く依存したビジネスは、電力自由化と矛盾するばかりでなく、イノベーションも阻害する。私は環境対策として再生可能エネルギーを普及させることには反対ではないが、それは市場原理と両立する方法でやるべきだ。電力を買い取るなら固定価格ではなく、オークションによって最低価格を出した業者から買い取るべきだ。

いずれにしても今回の法案は、それによって首相が辞める以外のメリットがなく、急ぐ必要もない。今国会では見送り、政権が変わってから冷静に検討したほうがいい。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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