日本の失業率はなぜ低いのか

池田 信夫

小幡さんの記事は、私への反論というより補足ですね。おっしゃる通り、雇用慣行が硬直的だということは、不況期に失業率が上がらないということで、正社員にとってはいいことです。しかし景気変動が雇用の変動で吸収できないと、結局は人的資源配分のゆがみが温存されて労働生産性が落ちるわけです。

ついでにCowenが前に紹介した「日本の低い失業率は容易に説明できる」という記事を紹介しておきましょう。その答は・・・

  1. 働かない女性が多い日銀の調査によれば、日本の女性の労働参加率はアメリカより5%低い。女性はパートの仕事がなくなると専業主婦に戻り、労働力調査で「求職活動をしている」と答えないため、失業率の分母となる求職者が少ない。

  2. 一人あたり実質成長率はそれほど低くない:日本の名目GDPは人口減少とデフレのために低く見えるが、一人あたり実質成長率でみると、図のように2000年代はアメリカとそれほど変わらない。

  3. 実質賃金が下がっている:非正規雇用が増えたため実質賃金は下がり、このため労働需要は増えた。正社員は雇用も賃金も硬直的だが、中小企業や非正社員の賃金は伸縮的であり、むしろこれだけ実質賃金が下がったのに失業率が5%もあるのは高い。

ひとつ付け加えておくと、この他に雇用調整助成金を受けている社内失業者が183万人もいます。これは労働人口の3%で、潜在失業率はかなり高いと考えられます。こうした余剰人員を抱える「やさしさ」は悪いことではないのですが、結果的には労働人口の移動をさまたげ、正社員の高賃金を非正社員の低賃金で埋め合わせる「二極化」が進み、そして労働生産性を低下させているわけです。

しかし民主党の代表選挙でも、こうした労働市場の問題は話題にもならない。経済政策として出てくるのは「量的緩和」とか「国債の日銀引き受け」とか、金融政策ばかり。増税や雇用流動化などのpolitically incorrectな問題から逃げるために「デフレ」という藁人形を仕立てているわけです。この状況では、誰が代表になってもまったく期待できない。

訂正:雇用調整助成金の対象者数が間違いだった。