「いまさら聞けない経済学」のおさらい

2011年09月25日 12:16

きのうのニコ生は、マクロ経済というむずかしいテーマなのに、視聴者は2万7000人。コメントは3万件もついて、75%が「よかった」と評価してくれました。地上波テレビでは「マネタリーベース」という言葉だけで「やめてくれ」といわれてしまうが、今回は2時間かけて徹底的に説明しました。ただ、それでも「わかりにくい」というコメントがあったので、ポイントを整理しておきます:

  • 「日銀がマネーを増やせばデフレも円高も止まる」:そういうことは事実として起きていない。図のように日銀がマネタリーベースを最大36%も増やした2002~6年の量的緩和でもデフレは止まらず、円は高くなった。これは資金需要がなく、金利がゼロに張りついているため。日銀が銀行にマネーを出しても、銀行の貸し出しが増えないので市中に出回るマネーストックは増えず、物価も上がらない。

  • 「増税しなくても日銀が国債を引き受ければいい」:それは「日本の国債は市中で消化できなくなった」というシグナルを出す結果になり、財政インフレが起こるだろう。デフレ脱却議連はそれを目的にしているようだが、通貨の信認が失われたらマイルドなインフレではすまない。財政破綻によるハイパーインフレは、ロゴフなども指摘するようにありふれた事件である。
  • 「増税より成長が大事だ」:成長が大事であることは確かだが、日本の政府債務は成長だけで解決するような規模ではない。ドーマー条件を計算すると、成長だけでプライマリーバランスを黒字にするには年率3.7%の実質成長率が必要で、これは現実的な目標とはいえない。むしろ消費税を10%に上げたぐらいではPBは黒字にならず、長期的には20~30%にする必要がある。
  • 「無駄な歳出を削減するのが先だ」:これは一般論としては間違いではないが、事業仕分けで数千億円節約しても900兆円の政府債務の金利にもならない。抜本的に歳出を削減するには社会保障を削減するしかない。特に年金を減額する必要があるが、これは増税と同じこと。福祉の削減は政府のアジェンダにさえなっていないので、それを待っていたらいつまでたっても財政は再建できない。
  • 「増税すると景気が悪くなって税収が減る」:1997年の消費税引き上げで不況になったというのは、時系列データを見ればわかるように間違いである。理論的にも国債の発行は課税の延期にすぎないので、増税は景気に中立だ(中立命題)。今のように財政危機が逼迫してくると、中立命題に近い状況になる。だから「増税か否か」という問いはナンセンスで、いつ増税するかが問題である。
  • 「国債は負債であると同時に資産だから、将来世代の負担にはならない」:これは現在世代の保有する国債がすべて無償で将来世代に譲渡されるなら正しいが、そんなことはありえない。国債で建設したインフラに価値がある場合(新幹線や東名高速など)には将来世代に資産が残るが、赤字国債は現在世代が消費してしまうので、将来世代には税負担だけが残る。
  • 「日銀法を改正してインフレ目標を設定すべきだ」:日銀も含めて世界の中央銀行は、オペレーションの基準としてインフレ目標を設定している。これに法的な強制力をもたせて「いかなる犠牲を払ってもインフレを*%にせよ」と政府が強制することは、有害無益な政策だ。たとえば日銀が全国の不動産を買い占めれば、インフレにすること自体は容易である。

以上は経済学界のコンセンサスだと思いますが、納得できない人がいたら、コメントでも投稿でも反論してください。出演者は全員「アゴラ」のメンバーなので、お答えします。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑