アメリカのアジア太平洋地区重視と日本のエネルギー政策

2011年11月18日 09:19

オバマ大統領がオーストラリア議会で行った演説は簡潔明瞭で実に判り易かった。要約すれば、今後アメリカはアジア太平洋を最重要地域とし安定と平和の維持そして繁栄の為に尽力すると言う事である。


私はこのアメリカの方針は日本に取って福音以外の何物でもないと考えている。第一の理由は繁栄の為に必要となるインフラや生産財を提供出来る国の第一候補は日本であり、日本こそがアジア繁栄の恩恵を受ける事になるからである。今一つの理由は、日本は政治が主役となって大きな事を決断する事が極めて苦手な国である。TPP議論の混迷が良い実例である。

しかしながら、こういう大きなフレームが決まってしまえば、後は難しい事を考える必要がなく、アメリカを追随すれば良いだけの話となる。今後シーレーン防衛の自衛隊による分担とか出て来るだろうが、防衛省は間違いなくてきぱきと、やるべき仕事を熟し、自衛隊は近隣諸国から賞賛、感謝される様な働きをする事は確実だ。

それでは我々日本人はアメリカのアジア太平洋地区重視を諸手を上げて歓迎すれば良いのであろうか?一点気掛かりなのは、日本が原油の90%と液化天然ガスのかなりを依存する中東の動向である。

色々と非難はあるものの、第二次世界大戦後中東和平に真剣に取り組んだのはアメリカだけである。欧州、ロシアそして中国は口は出すが所詮野次馬でしかなく、彼らの興味の主体は自国の権益の維持、拡大のみであったと思う。

そのアメリカであるが、リーマンショック後の長い不況で財務状況を著しく悪化させており、今年8月にS&Pが米国債の格付けをAAAからAA+に格下げしたのは記憶に新しい所である。債務問題解決の為に軍事費の大幅削減に向かうのは必至だし、その中でアジア太平洋地区重視で新たにオーストラリア北部に海兵隊を駐留するとなると、中近東での軍の撤退も含めた大幅なアメリカのプレゼンスの低下が予想される。

従って、問題はその時に何が起こるかである。

この記事を書くに際し、ざっと中東関連のニュースを読んでみたが実にきな臭い話が満載で、心が暗くなる。気に成ったものを一部紹介すると;

イランの核兵器開発に対しIEAE主要国が重大懸念を表明
イスラエルが核兵器開発阻止の為イラン空爆の準備中
イスラエル巨大ドローンの実践配備

ここに来てニューヨーク原油先物市場(WTI)が一直線に値を上げているのもきな臭い動きだ。欧州、アメリカ共実質不況であり、原油需要は減少しているのにである。

余り想像したく無い展開であるが、仮にイスラエルがイランを攻撃すればイランも直ちに反撃し、ホルムズ海峡は火の海となる。サウジ、クウェート他湾岸産油国からの原油、液化天然ガスの輸入は全てストップし日本は大混乱となる事避けれれない。

従って、日本の課題は、地政学的リスクを膨らます中近東への依存を少しでも減らす事にある。しかしながら、極めて残念な話であるが、日本のやっている事は真逆であり、自殺行為とも言えるものではないか?

具体例を挙げるとすれば菅前首相による法的根拠を持たない浜岡原発の恣意的な停止である。この穴埋めに中部電力はカタールから追加で液化天然ガスを輸入し、発電している。結果中東への依存を高めている訳である。

菅氏以外にもA級戦犯を探す事に苦労はしない。原発から再生エネルギーへのキャッチコピーで当選した世田谷新区長が何か再生エネルギー関連具体的に動いたと言う話聞いたことがない。

ソフトバンクの孫社長も当初は派手に花火を打ち上げていたが、昨日の石井氏記事を読む限り、実質何も進んでいないのではないか?

私がどうしても看過出来ないのは、やってはいけない事、出来もしない事を社会的に影響力がある人間が無責任に発言し、結果、世の中に原発を稼働させてはいけないといった誤った空気を醸成させてしまった事であり、且つ当人達のその事に対する余りの責任感の希薄である。

原発再稼働が叶わぬ状況下、停電を防ぐ為、電力会社が停止中の化石燃料を使用する発電所の再稼働に動くのは必然であり、燃料となる原油、液化天然ガスを増産余力の高い中東に依存するのも止むを得ず、中東依存拡大の咎を電力会社に求めるのは筋違いである。

3.11以降、間違いを続けた日本のエネルギー政策である。ここは余り拙速に対策を考える事無く、年末にかけ冷静になってあるべき姿を再考すべきと思う。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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