海外調達に舵を切ったヤマダ電気、この意味するもの

2011年11月24日 14:10

ヤマダ電気がいよいよ海外調達に舵を切った。消費者ニーズを見越し先手を打ったと言うのが記事の説明であるが、実際はそんな綺麗ごとでは無い筈である。

家電量販店最大手のヤマダ電機は、中国や韓国など海外家電メーカーからの商品調達を強化する方針を明らかにした。日本メーカー以外の商品の品ぞろえが今後、消費者から求められると見て先手を打つ。国際競争で劣勢の日本勢にとって、足元の国内市場でも売り場を奪われる事態だ。


この記事が示す通り、エコポイントや地デジの終了があったとは言え、10月度売上高前年同月比37.3%減は異常である。

ヤマダ電機(2011年3月期売上高:2兆1532億円)が11月11日に発表した10月の月次IR情報によると、グループ全店POSベース売上高は前年同月比37.3%減だった。
商品面では、前年10月8日のエコポイント基準変更発表以降、駆け込み特需が発生し分母が非常に大きくなっている。そのため、テレビ、冷蔵庫、エアコンの対象3品目については、大きな反動が出ている。レコーダー等の映像関連もテレビに連動して伸び悩んだ。

家電製品の安売りで今日を築いたヤマダ電気である。この危機を、構造改革、詰まりは、従来の国内メーカーからの仕入れを、中国を主体とする海外メーカーに変換する事により商流を根本から変え、安売りにより競合相手から顧客を奪う事で打開する事にしたのであろう。

今世紀をデフレの時代と割り切り、デフレと並走する事で企業としての生き残りを図ったとも言える。

勿論、この選択は諸刃の剣である。例え顧客を増やしたとしても商品の単価が下がり、結果売り上げが減少する確率が高い。ある意味、顧客増と売り上げ単価減のカニバリゼーションである。

今後、家電量販店は限りなく100円ショップ化し、価格が一桁下がるのではないだろうか?

こう言う現象に際し、国内製造業の空洞化問題と騒ぐ人間が出て来るのは最早お約束とも言える。しかしながら、これは実態経済を見ていない事から来る誤解である。

勿論製品に拠るが、多くの場合国内メーカーは台湾辺りの会社に発注し、台湾メーカーは中国の沿海部近辺で生産し、日本に持ち込んでいる場合が多い。

詰まりは、家電製品の製造にに関する限り、既に大分以前に国内での雇用は消失しているのである。それでは、本社の人間は一体何をしているのであろうか? 

強いて言えばマーケティング、プロモーションと実際の販売と言う事になる。しかしながら、前者は電通に丸投げし、後者はヤマダ電気他家電量量販が引き受けているので、社内の調整とか上層部への報告とかと言った「良く判らない」仕事をやっているのであろう。

これが許容されたのは、中国の人件費が国内に比べ格段に安く、台湾メーカーや日本本社の経費を負担しても最終製品の価格を充分に競争力のあるレベルに維持出来たからである。

今回のヤマダ電気の決断は、この商流の無駄を削除し自らリスクを取っても製品価格を下げに行ったもの、詰まりは、中国の安い人件費に寄生する日本の家電メーカー、ホワイトカラーのこれ以上の関与を不要としただけの話であり、実際の製造事態は大分以前から中国他海外に移転を終えているのである。

留意すべきは、この現象が決して家電製品のみで終わる訳ではない事である。マスコミは何時も円高を騒ぎ立て、まるで国内製造業が全て焼野原に成る様に騒ぐが、私が実際に話をした中小企業経営者達から聞いた話を総合すると、既にタイ、インドネシア、中国そしてベトナム辺りに順に進出済みでタイ、インドネシア、中国は黒字で増収増益基調。ベトナムも順調に立ち上がりつつあると言った所。

課題の円高にした所で、従来の日本の顧客に円建てで販売しているので問題ないし、序に言えば与信リスクもない。

日本市場は押しなべてジリビン、先細りで赤字基調。海外支社利益の還流でやりくりしていると言う話を良く聞く。早い話、国内社員の多くは実は社内失業状態にあり、家電のケースと同じで海外の安い人件費に寄生していると言う事実である。何れは淘汰されるに決まっている。

さて、それでは日本の製造業がどうやって生き残りを図るかである。

第一の可能性は、魅力的な商品提供の継続によりブランディングを確立し顧客ロイヤリティを高める事。これと併行して絶えざるサプライチェーンの見直しによりコスト競争力を高める事である。

目標とする企業はNikeである。同社の魅力的な商品と、それによって達成されたブランディング及び顧客ロイヤリティに就いては説明不要であろう。

意外と知られていないのは、会社設立時は世界で最も技術力のある日本で生産し、ブランディングの確立に成功。以降、生産拠点を韓国、タイ、インドネシア、中国そしてベトナムと絶えずより安価な人件費を求め生産基地の最適化に努めた事である。

「中国に取って代わったベトナム=ナイキ・シューズ最大の生産拠点に」等と今年、中国国内でセンセーショナルに語られる事も多かった様だが、条件さえ合えば今後アフリカのウガンダがNike最大の製造拠点となっても何の不思議もない。

次の可能性は、徹底的に要素技術の研究開発に特化する事である。中国と中国に雁行する新興産業国の研究開発センターを目指すと言っても良いかもしれない。

この場合大事なのは、優秀な外国人研究者、技術者をリクルートし、日本人と競わせ活性化させイノベーションに誘導する事である。外国人研究者、技術者の招聘の為には年収だけでは駄目で、家族が安全に気持ち良く生活出来る公園、緑の多さや、治安の良さ、充実の医療と言った住環境が重要と思う。この意味、企業と地方自治体の提携がキーとなる。

最後は製造コストに大鉈を振るい、価格で真っ向勝負を挑むやり方である。しかしながら、現状の制度、社会構造では難しい。

今後、日本が財政規律回帰に向かう中で社会保障費削減は不可避である。従って、若年層の生活保護受給者に対し、健康上特段の支障、問題が無ければ低賃金ではあるが、就業を保証する代わりに生活保護を打ち切るとか、年金の支給開始年齢を遅くし、代って就業を保証する等して人件費を低減出来れば可能ではないだろうか?併せて社会保障費も減額出来るので一石二鳥なのだが。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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