被害妄想が被害を拡大する

2012年01月22日 11:48

災害の被害というのは普通はサンクコスト(定数)なので、それを考えることは無意味なのだが、福島事故の直接的な被害はほとんどなく、二次災害の大部分は国の線量基準に依存する変数だから、今からでもそれを最小化できる。線量基準の過剰規制を見直して、被災者の帰宅を促進すべきだ。

他方、二次災害を最大化するのが早川由起夫氏のような被害妄想である。

  • 福島農民がいっせいに田んぼを耕した時点で、日本国に対して戦争を仕掛けたと私は判断した。無知とかやむを得ずとかは関係ない。殺意があったと解する。
  • 毒米を売りさばいて大量殺人ねらいなんですか。それは犯罪ですよ。
  • 責任一切持たない。一銭も補償しない。だから避難しろと口が裂けても言ってない。


彼も一応、「私は避難しろとは言ってないのだから二次災害には責任を負わない」という逃げ道を用意しているようだが、国の暫定基準を満たしている福島の農産物を毒物よばわりすることは明白な偽計業務妨害罪である。警察は彼を逮捕すべきだ。

暫定規制値(野菜の場合セシウム137が500Bq/kg)は実効線量係数(1.3×10-8)をかけると6.5μSv/kgだから、人体に危険とされる100mSvの放射線を浴びるには1年に15t食わなければならない。さらに先日のニコ生でも松田裕之氏が批判していたように、農水省は4月から規制値を100Bq/kgに引き下げる。これによって救済されるのは、1年間に野菜だけで75t以上食う人だけである。

ところがメディアも、こうした過剰防衛を批判しない。直接的な「安心」のメリットは明らかだが、出荷停止で生じる補償金のコストは薄く広く納税者が負担するからだ。そして早川氏や安富歩氏のような「危険厨」は、放射能の影響を誇大にいいつのることが「正義」だと信じている。安冨氏は次のように彼を賞賛している。

早川さんのツイッターはしばらく前に分析して、深い思想と戦略とが込められた発言で、欺瞞でも扇動でもないことを確認しています。

早川氏と安冨氏の論理は同じである。彼らが「危険だ」という科学的根拠は何もないのだが、まさに根拠がないことが不安をあおる材料なのだ。何もわからないのだから危険だということもわからないはずだが、安冨氏はなぜか危険だということだけはわかると主張する。その根拠は「私は危険だと思う」という宗教的信念だけだ。彼らこそ二次災害を拡大する犯罪者である。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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