エネルギー政策を語るビル・ゲイツ

池田 信夫

今月1日に米エネルギー省の開催したARPA-E(エネルギーの研究機関)の会議のメインはビル・ゲイツとエネルギー省のスティーヴン・チュー長官。これを見ると「脱原発」とか下らないことを騒いでいる日本のエネルギー政策が、1周遅れになっていることがわかる。


エネルギー政策の最大の課題は脱化石燃料である。石油の供給が不安定になり、大気汚染や地球温暖化が問題になる中で、クリーン・エネルギーの供給を拡大することが重要だ。途上国にとってもエネルギー不足が貧困の原因であり、開発援助よりもエネルギーのインフラ整備のほうが有効だ。

この問題を打開するためにゲイツが提案しているのは、エネルギー産業の規制改革炭素税である。特に原子力の規制は過剰で、発電所を申請してから許可が下りるまでに10年以上かかるような産業には、イノベーターは参入できない。アメリカでは最近まで30年以上、原発の新規許可がおりなかったため、原発より危険で汚い石炭火力が発電量の半分を占めてしまった。

再生可能エネルギーは重要だが、現在の技術はとても化石燃料の代わりにはならない。今の装置に補助金を出すフィードインタリフはナンセンスで、必要なのはもっと効率の高い技術の研究開発に政府が補助金を出すことだ。特に節電技術や蓄電技術にはまだイノベーションの余地がある。エネルギー分野への政府の研究開発投資は少なすぎる、とゲイツは力説している。

原子力のエネルギーは重量あたりで化石燃料の数万倍なので、技術的にはもっとも有望で安価なエネルギーだ。福島第一原発事故は40年前の古い設計が原因で、現在では起こりえない。最新のAP-1000は、電源を喪失しても受動的安全装置で3日間冷却できる。ゲイツの投資しているような「第4世代原子炉」が実現すれば廃棄物の問題も解決し、核燃料はほぼ無尽蔵だ。こうした分野に政府が投資すれば、かつてARPAがインターネットを生み出したようなブレークスルーの可能性もある。

エネルギー省がゲイツをメインゲストにしたことは象徴的である。彼はアメリカのエネルギー戦略を代弁しているのだ。ITの次の規制改革の焦点は電力産業である。ITほどの急速なイノベーションは期待できないが、スーパーコンピュータで開発の速度は上がっている。日本にもエネルギー技術はあるので、規制改革は今からでも遅くない。