長男が中々内定を取れず、家の中が随分暗くなったと言う話

山口 巌

それ程懇意でもないが、知人の一人からランチを御馳走するので相談に乗って欲しいとの依頼があった。私が月例で勉強会を開催しており、ベンチャー企業の経営者や大手企業幹部が出席している事を知り、一度話をしてみたいと思ったそうである。

相談の中身を聞いたら、「長男の就活」と言う事で、正直余り気乗りはしなかった。そうは言っても、無下に断る訳にも行かず、先程、相談を受け、自分なりに思う所を説明して来たと言う次第である。

予め、メールで毎日新聞のこの記事を送って来た。これに奥様が甚くショックを受け、家の中が暗くなり、ピリピリしているとの事である。30社程度に応募して、未だ内定が取れず既に半数程度不採用が確定したとの事である。


考えてみれば、大学生だけも国内で80万人弱が就活をしており、ほぼ同数の家庭が同じ様に暗く成ったり、ピリピリしている訳である。

経緯はこういう事なのであるが、先程知人に説明した内容が、就活生や、そのご家族に多少なりとも参考になればと言うのが、この記事を書く事にした経緯である。

企業が新卒に求めるものは「即戦力」?

確かに、新入社員が何時までも使い物にならず、結果、お荷物、お客さんの状態なら問題である。しかしながら、所謂、「ブラック企業」ならいざ知らず、真面な企業が学生に求めるのは「地頭の良さ」であると思う。それさえあれば、どういう方向にでも進んで行けるからである。

「地頭の良さ」とは具体的にどう言う事か?

少し抽象的に言えば、「状況の整理」、「問題点の抽出」、「問題解決策の策定」、「実行」、「検証」を継続的にやり続け、成果を出す能力と言う事であろう。

もっと具体的に言えば、「読み」、「書き」、「そろばん」に通暁していると言う事だと思っている。

「読み」=高いレベルでの情報リテラシー

企業内で戦力になれるか否かは、偏に情報リテラシーに懸っているのではないか?「正確」で「重要度」が高い情報に何時でも接する事が可能な状況を構築出来る能力が求められている。

そして、取り込んだ情報を一旦自分の頭で精査し、体系化して、自身のデータベース(DB)を日常的に更新する事を習い性にせねばならない。

今一つ肝心な事は、学んだ事、勉強した内容を(DB)に格納してお仕舞ではなく、日々の業務で使い熟し、職場、現場で活用して、その検証結果を、自分自身のパーソナルな経験(DB)に迄昇華する事を、同じく習い性にする事である。

勉強会やセミナーで得た「抽象的」な論理を、具体的に職場での施策に落とし込むのである。そして、その結果を検証し、再度抽象化した上で、(DB)に格納する訳である。抽象化しなければ応用が効かない事は言うまでもないだろう。

「読み」=高いレベルでの情報リテラシーこそが、「抽象的論理」と「現場」をフットワーク良く移動する為の、移動手段である。

「書き」=プレゼン能力

仕事を前に進める為には、社内であれば、同僚、先輩、上司、そして他部門の人間を巻き込み、ベクトルを統一せねばならない。この中核をなすのが「企画書」であろう。

社外であれば、「説得」し「納得」して貰うと言う事になるが、同様中核をなすのは「提案書」と言う事になる。

「企画書」にせよ、「提案書」にせよ、大事な点は「判り易さ」に尽きる。

その為に重要なのは、「正確な言葉」、その「正確な言葉」が「論理」によって見事に配列された文章となっている事。読み手の立場や状況に配慮して、読み手本位で書かれている事が重要であろう。

従って、「企画書」や、「提案書」をテンポ良く作成し、相手に寄り添った形で誠意をもって説明出来る能力が重要である。

「そろばん」=論理的思考及び計数管理能力

言うまでもなく、全てのビジネスは「法の支配」の下に行われねばならない。そして、「法」こそが「論理的思考」が具体的に体系化されたものである。これは、取りも直さず、論理的思考が出来なければ「法」が理解出来ず、結果、企業内では使い物にならないと言う、冷徹な事実を意味する。

「計数管理能力」は企業活動の目的が「利潤」である以上、必須の能力である。

「事業計画」の立案に於いて、数字の背後にある物事の本質を理解せねば、単なるエクセルの御遊びになってしまう。数字と数字の背後にある、物事の本質を洞察する能力が求められるのである。

事業が実際に動き出せば、「予算」と「実績」の管理、所謂、「予実管理」を「日次」、「週次」、「月次」で厳しく行わねばならない。そして、「実績」が「予算」を下回る事は良くある話である。

その場合、「数字」の傾向を読み込んだ上での;

担当者に問題があるのか(能力が足りない)?

マネージメントに問題があるのか(管理者不在)?

そもそも、「事業計画」事態に問題があるのでは(甘い見通し)?

これ等を精査する必要がある。そして、その結果を踏まえての対応は下記となる。

担当者の交代

責任者の更迭

損切りを伴う、事業撤退

数字に強いからこそ、こう言った外科手術が大胆に出来るのである。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役