消費税は目先10%まで上がるシナリオが出来つつあります。もちろん、実現するかどうかはまだわかりませんが、時期のずれはあろうとも10%への消費税上げは通過点との意見もあちらこちらで見受けられるようになりました。
何故消費税が何処までも上がらなくならなくてはいけないかといえば端的に言ってしまえば社会保障費が足りないのです。うち年金が約半分、医療保険が三分の一ぐらいでしょうか?それ以外が福祉などに使われています。そしてそれらがほとんどが高齢者に関係する支出であることもお分かりになるかと思います。
まず、医療費ですが今後も増大する傾向を否定できません。数日前のブログにも指摘しましたとおり、平均寿命は延びています。そしてその理由は発展した医療によるものが多いのです。更に最近は政府や役所が国民の健康的生活を積極的に支援する傾向が強まっています。役所の考え方としては健康であれば医療費を減らすことが出来る、という発想です。
なるほど、一見正しいかもしれません。しかし、実情は違っている気もします。健康関係のテレビやニュースが巷にあふれてしまい、視聴者が「耳年寄り」とはいいませんが、にわか知識で自分の状況を疑い、医者に行くことが増えているのだろうと思います。もっとも、異常なしであれば医療費も少額で済むのかもしれませんが。
病院の患者の重度を統計的分析をしたものがあればよいのですが、10人の患者のうち、高いレベルの治療が必要なものと中レベル、低レベルと分けたとき、高レベルの治療が過半数もあるとは思えません。そういう前提に立つのならば私はホームドクター制度に近いものを取り込むことで医療の効率化を図れるような気がします。
よくよく考えてみれば現在、大学病院などは紹介状がないと見てもらえないことも多いかと思いますが、一案として総合医療設備が整っているところと街の病院の区別を完全に図ることで医療システムを体系化することが考えられないでしょうか? 一方で民間の医者が営利に走りすぎていることも今後、対策が求められると思います。
もう一つの問題の年金のほうですが、これはこのままでは破綻することが目に見えています。破綻するのがわかっていてそれを継続するのは企業においては問題になります。国は本来、継続不可能である年金支払いを借入金を増やすことで延命させているだけになります。つまり企業再生的な発想ならば今の時点で一度清算しなくてはいけません。更に若い人は不払い等で更に年金財政は悪化しています。
この前提に立てば私なら年金の仕組みをスクラッチから作り直すしかないと思います。そして、既存の受給者はそのまま、需給年齢に達しない人は旧システムと新システムのミックス、そして、これから年金を払う若年層は新システムを適用します。新システムにおいては年金は補助的役割のみとし、個人が老後のプランを進めていく中で税制の優遇をすることでワークさせます。
このやり方ですと新システムに完全移行するのに40~50年かかりますが、その間に年金の膨張は止めることが出来ます。既得権を取り上げるのは不可能でしょう。一方でまだ若く、ばりばり働いている世代にとって、もらえるかどうかわからない年金システムでは意味がないのです。
政府は社会保障制度をドラスティックに改革することを恐れています。それは政党政治であるがゆえの歯がゆさともいえます。もちろん、言うほど容易くないと思っています。しかし、年金に対する不満は高齢者より若い人の不満が高まっているということは政府として認識すべきです。
医療、年金の無制限な膨張が止められるのなら消費税は巷で噂されるヨーロッパ諸国並みの水準にする必要はないはずです。消費税増税反対、と叫んでいるその根本理由が社会保障費にあるという説明は十分になされていない気がします。メディアの正しい情報発信を願いたいものです。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年3月22日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。