日本がIMFへ4.8兆円融資を決めた件

2012年04月19日 10:30

BBCが伝える所では、欧州債務危機対応を目的として、日本がIMFへ4.8兆円融資する事を決定したとの事である。

Japan has agreed to give the International Monetary Fund (IMF) loans worth $60bn (£38bn). The IMF has been calling for extra cash from its members to shore up its finances and help deal with problems stemming from the European debt crisis. As the debt problem has deepened, the IMF has been providing emergency funding to countries such as Greece.Japan said it now expected other IMF members to also contribute to the fund.”I am confident that many other countries will pledge contributions to the IMF,” said Jun Azumi, Japan’s finance minister. “Following a series of eurozone’s policy responses, it is important to strengthen IMF funding and pave the way for ensuring an end to the crisis, not only for the euro zone, but also for Japan and Asian countries.”The head of the IMF, Christine Lagarde, said that the deal with Japan was an important step forward and would help promote global economic stability.

日本政府は、600億ドル(約4.8兆円)をIMFに融資すると発表した。IMFは、欧州危機への対応力を高めるため、参加国に対し追加融資を求めて来た。債務問題重篤化の過程でギリシャ等に緊急融資を継続して来たからである。 安住財務相は「欧州危機のみならず、日本及び周辺アジア諸国の不安定化収束につなげるために、早期の合意形成に貢献すべきだと判断した」と述べた。そして、日本がIMFへの融資額をいち早く表明することで、他の参加国の貢献を促すであろう事を確信していると述べた。IMF総裁, Christine Lagarde氏はこれを受け今回の日本の決定は将来に続く重要な一歩であり、世界経済の安定に寄与すると語った。

この決定に対し、ネットでは相変わらず、「気前が良すぎる」、「消費税増税を国民にお願いしておいて、何を大判振る舞いしているのだ!」と言った批判的記事が多い。

本当にそうであろうか?

ネットの読者は恒常的に政府を批判する記事を求めているので、アクセスを稼ぐ為には仕方のない事かもしれないが、矢張り、感情的であり、冷徹な得失分析が出来ていないとの誹りは免れない。

今回の決定で日本が得たものは何であろうか?

先ず第一は、言うまでもない事であるが金融危機に苦しむ欧州諸国からの感謝である。洋の東西を問わず、人間は辛い時、苦しい時に救いの手を差し伸べてくれた人に感謝するものである。

今一つは、世界の中の日本を認識し、世界の危機に際し、真っ先に身を挺して行動を起こす日本の姿勢を示した事である。世界中の共感と支持を得るに違いない。

例えば、日本固有の領土である尖閣列島に、中国が野心を隠そうともしないと言う問題にこの所、日本政府は苦慮している。

北に配置している自衛隊を南に展開して、防衛力を高めると言う対策は勿論有効である。所謂、「ハードパワー」の活用である。

一方、今回の「IMFへ4.8兆円融資」を他国に先駆けて表明する事で、世界に貢献する日本を訴求する事が出来る。これは、軍事とは真逆の「ソフトパワー」である。

仮に、中国が日本の領土に侵略したならば、現在の北朝鮮の如く国際的孤立を招く事になり、チベットで経験した様な侵略は不可能である。

日本に必要な事は、不必要に軍事大国化し、近隣諸国に本来不要な「不安」や「恐怖」を与える事ではなく、「ソフトパワー」を上手に活用し、軍事力、「ハードパワー」との最適組み合わせを追及する事の筈である。

その意味で言うと、田中直紀防衛相に対する問責決議案提出等は所詮、枝葉の話に過ぎない。

マイナス部分に就いても書かねばならない。今回の決定で日本が失ったものは何であろうか?

4.8兆円に及ぶ融資の為に、新たに新規国債を発行すると言うのであれば、矢張り日本政府として取るべき施策、「国家債務の圧縮」に逆行で好ましいとは言えない。

しかしながら、仄聞する所では、2009年の金融危機に際し、1,000億ドルの資金支援を実行した経緯があり、返済予定の500億ドルに外貨準備金から100億ドルを追加して、600億ドルの支援実行との話である。

確かに国家財政の喫緊課題である、「債務圧縮」を考えれば円転して国債発行の抑制に回すと言う考えもあるかも知れないが、これはこれで「円高」と言う別の為替問題が発生しそうである。

今日から、米ワシントンで始まる、G20財務相・中央銀行総裁会議での安住財務大臣の活躍に期待すると共に、今回の「見事!」の一言に尽きるシナリオを書いた財務省を高く評価する。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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