4月30日付の日本経済新聞が報じた「東京女学館大学閉校」のニュースが大学関係者を中心に話題になっている。これだけ少人数教育にこだわり、キャリア教育に力を入れていたこの大学が、なぜ閉校するのかと私は非常に残念に感じていた。大学も淘汰される時代であり、そうあるべきだと思うものの、なぜこの大学が?という想いが胸の中に渦巻いていた。

その真相が明らかになった。今回の閉校騒動は、「権力の暴走」であり「詐欺」とも言える。また、文部科学省のずさんなお役所仕事ぶりも問題にするべきだろう。学内関係者から入手した、資料をもとにお伝えすることにしよう。
まずは、今回の閉校にいたるまで、東京女学館大学で何が起こったのか。この約10日間の動きを関係者の資料をもとに共有しよう。

1)4月21日(土) 全学臨時評議員会・臨時理事会が開催される
議題は「大学の今後について」
ここで、来年度の学生募集停止が可決される

2)4月23日(月) 大学臨時評議会18時〜19時
評議会の構成員は、学長(法人理事長、中学高校長を兼務)、事務局長、学長より指名された教員5名(構成員以外の出席:学長補佐)。教員5名は欠席し不成立に。
教員が欠席した理由は文部科学省に提出する「学生募集停止について」の報告書類に評議会開催の日付が利用されることを危惧したためである。
教員は「説明は、水曜日に他の教職員と一緒に聞きたい」との文書に5名で署名して提出した。
翌日、教職員に何も説明してないのに、学長は文部科学省へ募集停止の報告を行った(それは下の4にて質問して、初めて判明した)。

3)4月25日(水) 大学臨時評議会15時〜16時半
臨時評議会の招集メールが、24日(火)18時以降に学長から評議会メンバーに届く。
25日(水)に評議会が招集され、「学生募集停止についての意見を聞かせてください」と議長(学長)。
参加者は17時から大学教職員説明会が予定されているのに、評議会を招集して意見を聞く目的を確認。学生募集停止という重要なことについては教授会でも審議するべきではないかと質問した。その回答は東京女学館大学評議会規程4条3項により、「学部、学科、その他重要な組織の設置又は廃止及び学年の定員に関すること」を審議する場は評議会であると説明を受ける。
この臨時大学評議会にて審議し、賛成1、反対5で議決(よって、学長のいう教学側の最高意思決定機関の議決は否決。4月25日)。
学長が「この評議会での議決を文部科学省に報告する」と明言。

4)4月25日(水) 大学教職員説明会 17時〜19時30分
文部科学省への届けが4月24日(火)に行われていたことが判明。
直後に学生と保証人に対する郵送・説明会の予定が発表されたところ、反対の意見表明が圧倒的。

5)4月26日(木)大学臨時教授会 18時〜20時
学生と保証人に対する説明会の日程の発表。案内状の発送は4月28日(土)と説明。
前日に続き、発送後の在学生への対応を確認しても、具体策はないことが判明。
この臨時教授会から学長補佐は、「25日大学評議会は意見確認をしただけである」と前日の発言とは異なる言明を行ったが、証拠もあるので賛成1、反対5という議決をその場で確認した。
学生募集停止手続きの規程違反との判定を教授会決議。

6)4月27日(金)全学説明会 18時半〜22時
小中高大の教職員百数十名が参加。説明後の質問、意見が続出し20時終了を延長し、22時まで実施。その場で、大学教職員は基本的に全員4年後に解雇なのに、学長、学長補佐は対象外だと説明があった。大学以外の小中高の教員から、「初年度納入金が高すぎるのが学生募集を達成できない最大要因なのに、報告書にその記述が皆無。大学の教職員に責任押し付けるのはおかしい」「こんな大事なことを今日知らされて、明日朝全学生・生徒・保護者へ郵送では、次の授業日の対応がとれない」など反対が続出した。が、法人事務局長は、これが最善と強行を宣言した。


ここまでのログを見ると、今回の募集停止決定は学長などの暴走だとしか思えない。そして、文部科学省に適切な報告が行われていたと言えるのだろうか。

さて、今回の問題について、ポイントを検証してみよう。

まず、赤字の原因について。これは初年度納付金合計が179万円(授業料120万円、施設費24万円、入学金35万円、女子大は一般に130万円台に集中)という高額となっていることにも原因がある。開校時に理事会によって設定された。学生募集が著しく困難だったことが最大の要因だ。しかし、関係者によると何度言っても理事会はこれを変える経営努力を怠り、募集停止に踏み切った。判例では民間の整理解雇では、できる策はすべて打ったかが問われるので、もし本当に閉校になったのならば、ここは問われるポイントだろう。しかも、ここ数年学園自体は黒字である(23年度のみ、退職給与引当金特別繰り入れをしたので表面上赤字)。

また、25年度募集停止の文部科学省への報告用紙には教学側として教授会または評議会の決議を入れる項目があるのにも関わらず、「後日報告します」といって24日に提出が行われたという。報告の瑕疵と文科省がそれを受けつけたことも問題である。大学の評議会、教職員への説明会は翌日4月25日だったので、大学で働いている教職員へは何も知らせずに勝手に提出したのだ。

さらに、学長兼理事長は4月25日の15時の大学評議会で、「ここで意見を聞き、文科省にその議決結果を書いたものを提出する」と言明した。関係者によると、その発言はテープにより録音されているという。しかし実際は、前日に出していた。これは虚偽報告にあたる。これだけ重要な案件である。詐欺とも言えないだろうか?この大学評議会では停止案を否決。そのあとの教授会では、教員全員で否決。最高意思決定機関の評議会の否決を文科省はどう見るのだろうか?

なお、説明案では教職員は4年後に全員解雇が明記されている。しかし、学長、学長補佐だけは、やめないと説明会で明言したという。経営責任はどうなるのか。

学生や保護者に対する説明についても、問題を感じる。4月27日の18時半の全学説明会で初めて小中高の教員はこの話を聞いた。そして、翌日には全学生、保護者に通知を送るという。その場の全意見は「これでは、次の講義日である5月1日にどう学生、生徒に教員は対応していいかわからない。延期して、対策を作ってからにしてほしい」といったが、却下されたという。なお、説明会は連休の谷間にあたる5月1日に開催される。これは私のうがった見方ではあるが、あえて参加しにくい連休の谷間にしたという見方をされても文句は言えないだろう。

東京女学館のこの騒動は、大学の経営と、文科省のお役所仕事に対して考える好材料となりそうだ。

大学には強い経営者が必要であるという私の考えは変わらない。ただ、前提として正しい経営が行われなくてはいけないのだ。そして、第二のこのような事件が起こらないためにも、この大学の募集停止の報告を白紙撤回すべきである。大学の経営を文科省はちゃんと監視しなくてはならない。

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