河本準一氏は何故叩かれるのか?

2012年05月27日 06:56

YouTubeにアップされた謝罪会見を実際に視聴した。先ず、世間を騒がせた事を侘び(実際に騒がせたのは週刊誌や自民党議員なのだが)、次に経緯を説明した後、福祉の担当者と相談の上の行為であるが、「自分の考えが甘かった」で締めくくっている。


自民党議員に反論する訳でもなく、福祉の担当者や組織に責任の所在を求めてもいない。「責任」を一身に引き受けてのお詫びである。日本人の一般感情からして、「非」を認めたのだから「罪」を問えとはならない。寧ろ、泣いて謝っているのであるから、もう良い加減に赦してやれの方向に世論は動く筈である。

吉本が記者会見を設定した事から、ケツ持ちが吉本である事ははっきりしている。一方、民法の雄、フジテレビの豊田社長は、河本の番組出演「影響ない」と絶妙のタイミングでの援護射撃である。各局がこれに追随するのは当然である。

一連の流れを見る限り、この件は業界的には既に決着済みの様である。週刊誌や一部の自民党議員が粘着しない限り、三か月もすれば国民はすっかり忘れてしまうに違いない。

興味を引かれるのは、何故河本準一氏がここまで叩かれねばならないかである。先ず、登場人物を整理してみる。

河本準一氏:芸人、有名人で高額所得者
週刊誌:国民の怨嗟、怒りを利用し、マスを創造してのマネタイズが本業
自民党議員:国民の怨嗟、怒りを利用し「票」に結び付ける「票乞食」
河本準一氏の母親・姉・叔母二人:貧困者で生活保護受給者
福祉事務所:生活保護が受給出来ず餓死者が出ると叩かれる事多し
吉本:河本準一氏のケツ持ち。河本準一氏で商売出来ると考えている
フジテレビ:貸し借りが通用する業界で吉本に貸しを作った?

こうやって鳥瞰してみると、「生活保護」が週刊誌に取って扱い安いテーマである事が判る。「生活保護」が認められず、結果、餓死に至る様な事があれば、「弱者の味方」、「社会正義」の看板を掲げ、福祉事務所を叩きまくる。

結果、国民は一時的に偽りのカタルシスを得、週刊誌は部数を伸ばす。或いは、今回の如く、生活保護受給者の親族に高額所得者がいれば同様である。河本準一氏の如く有名人なら更に善しと言った所であろう。

一方、自民党議員の存在であるが、これは、「週刊誌にちゃっかり便乗」、と言った所ではないか。

こう考えてみると、「生活保護」に関係する話は今後も繰り返しマスコミに取り上げられ、国民の耳目を集める事になると推測する。そして、改めてこの背景をきちんと理解する事が重要と考えるのである。

今月のアゴラ記事、パナソニックが日本を見捨てる日で説明した通り、今後元気の良い企業や、その従業員の海外移転が加速する。必然的に税収は減少する。一方、高齢化と失業が増える事で「生活保護」の増加は避けられない。話題のパナソニックも海外移転と併行して、始まりそうなパナソニック本社の大リストラみたいな話も、最近良く耳にする。

国民の多くが、大なり小なり、自分自身が失職する可能性、再就職が叶わず「生活保護」受給者に転落する事への不安を持っている。一方、理屈は理解しているとしても「生活保護」受給者が無規律に増加して、日本が財政破綻に陥るのではとの漠然とした不安も併せ持っている。

そして、この漠然とした国民の不安こそが、週刊誌やそれに悪乗りする政治家のつけ入る隙である。こういう愚行を恥じない政治家には、今一度政治家として、「何の為」、「誰の為」、「どちらの方向に向かい」、「何をするのか」自問自答して欲しいものである。本来、かかる不安を軽減する事こそが政治家の仕事の筈である。国民を煽ってどうするのだ。

次に指摘したいのは、国民の数字に対する感度である。膨張する生活保護と言っても精々年間3兆円程度と聞いている。不正受給がその内10%として3,000億円である。私は決して不正受給を容認するものではない。寧ろ、大変下品で下劣極まりない行為と思っている。しかしながら、問題はこの部分の締め付けを余り厳しくやると、本来受給されるべき貧困者に金が回らず、最悪、餓死に至る可能性がある事だ。

何ら法的根拠を持たない、菅前首相による「浜岡原発停止」に依る追加燃料費の支払いは前期で3兆円超と聞いている。これは、何れ国民が電力料金の値上げで負担すべきものである。3兆円を気前良く溝に捨てておいて(現在も継続中)、河本準一氏を執拗に叩くと言うのは矢張り尋常ではない。

最後に言いたいのは、「天下り」可能な特権階級と、「生活保護」の不正受給者のどちらが日本を悪くしているのかと言う比較である。

「生活保護」の不正受給者は社会の底辺に埋もれているだけの存在である。「税」に寄生し、財政に負荷をかけているだけの存在である。一方、昨日のアゴラ記事、B-CASが壊れて有料放送も破綻するのか? でも説明した通り、「特権階級」の天下り受け皿として設立された会社の大半が問題の根本原因であったり、結果、日本に尋常でない災禍をもたらしているケースが多い。

B-CASに就いて説明すれば、ICカードリーダーが品薄、B-CAS騒動でとの話で、正に有料放送破綻前夜の様相である。経済損失が何処まで膨らむのか想像すら出来ないのである。

経済が低迷する中で、国民が不安や不満に悩まされるのはある程度致し方ないと思う。しかしながら、その矛先を「弱者」、「貧者」に求めるのは絶対に間違っている。国民が注視すべきは、「天下り」に象徴される、古くなり機能しなくなった日本の従来システムのスクラップアンドビルドの進捗の筈である。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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