「努力、友情、勝利」ビジネス書は大人の週刊少年ジャンプである

2012年05月27日 13:35

突然だが、皆さんは週刊少年ジャンプにハマったことはあるだろうか?私は、ある。『キン肉マン』『北斗の拳』『聖闘士星矢』『ウイングマン』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が好きだった。

ふと気づいたのだ。勝間本に代表されるビジネス書ブームがあったわけだが・・・。このビジネス書は「努力・友情・勝利」という週刊少年ジャンプの方程式をそのままなぞっていることを。

そして、ジャンプ同様に、胸は熱くなっても、自分が強くなれるわけではないのだ。


そう確信したのは、スマッシュヒットしている『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』(マイナビ新書)の著者、漆原直行氏の講演を聞いたからだった。

私が担当している女子大の講座でゲスト講演をして頂いたのだ。ビジネス書とは何か、代表的な本の紹介、勝間和代、本田直之など代表的な著者の紹介、ビジネス書のツッコミどころ、代表的な手法であるパーソナルブランディングについての検証、それに関連して安藤美冬の分析、ビジネス書と上手に付き合うためのアドバイスなど、極めて充実したものだった。

やや余談だが、約70名の参加者のうち1割程度が安藤美冬の情熱大陸を観ていたのだが、感想は「結局、慶應→集英社でしょ」「何やっている人かわからない」「ああはなりたくない」という非常に素直な感想で新鮮だった。また、「初期勝間本を何冊も読んでいたが、目がさめた」「勝間さんの『結局、女はキレイが勝ち』を美容の本だと思い買ったら、中身を読んで仰天。すぐに本を閉じた」という声もあった。なかなか面白いエピソードなので紹介しておこう。

ビジネス書がブームになったのは2000年代だ。ふと素朴な疑問が湧いたのだ。ビジネス書は結局、世の中を個人を、どう変えたのか、と。

楽しく働くためにはスキルもマインドも必要だ。勝間和代が売れ始めた頃「効率化ってどうよ」という声もあったわけだが、たしかに自分の時間を増やすためにもそれは必要である。最新作『大学生のための「学ぶ」技術』(主婦の友社)にも書いたが、これからのビジネスパーソンにとって学び続けることは必須である。また、優れたビジネス書というのも存在すると信じているし、編集者も著者も魂かけている(はずである)。

ただ、読者たちが本を読んで幸せになれたかどうかはわからない。勝間本を読んで年収が10倍になった人にお目にかかったことはない(断る力を上司と部下が使って、職場が泥沼の血で血を洗う阿鼻叫喚の地獄絵図と化した話は知っている)。ビジネス書を読んだところで、頭まで筋肉でできた課長にこき使われる日々は変わらない

みんな変わりたいから、活躍したいから、ビジネス書を読んだのだろう。その気持ちはよく分かる。実際、15年間サラリーマンをした自分はいつもそう考えていた。それこそ、日経ビジネスアソシエを長年愛読したし、勝間本もいっぱい買っていた。勉強会にも、異業種交流会にも参加していたこともある。そんな痛い日々を経て、陽平青年は大人になっていったのだ。

結局のところ・・・
「努力、友情、勝利」
この3つのキーワードでビジネス書は動いている。読者たちもそれに期待し、著者も応えているというわけだ。もちろん、すべてのものがそうではないのだが。

特に勝間和代の本は、これが全てつまっている。

努力:思考するフレームワークを身につける、効率化するためのツールを揃えることなどなど。
友情:ファンに支えられていること、有名人とのつながりなどを紹介。
勝利:情熱大陸に出る、紅白の審査員、年収10倍などなど

見事ではないか!

そして、この週刊少年ジャンプの方程式を愚直に実践しているのが安藤美冬である。勝手な解釈だが、おそらく、安藤美冬はワンピースの主人公ルフィをかなり意識してパーソナルブランディングを行なっているだろう。弱さをさらけ出しつつ、ノマド王、フリーランス王に私はなると叫んでいるように見える。

もちろん、ビジネス書を読んで頑張っている人を批判するつもりはない。「ビジネス書を読んで自分磨きしている若者ってどうよ。ケッ」と言っている中年たちも、サラリーマンのお伽話『島耕作』シリーズにはまり「出世・成功・情愛」という勝利の方程式を礼賛しているではないか。「努力・友情・勝利」と似たようなものだ。

ただ、全ての人が変われるわけではない。すべてが、ジャンプのように、ビジネス書のようになるわけではないのだ。

私は、小学校時代に友人に北斗百裂拳をお見舞いし、秘孔をついたのだが、友人は死ななかったし、ましてや内蔵が破裂したわけではなかった。喧嘩でウォーズマンのパロ・スペシャルをかけようとしたのだが、相手の協力がないときまらないことに気づいた。そうやって大人になっていくものなのだ。ビジネス書読者もそろそろ気づいて欲しい。

今年、勝間和代は『「有名人になる」ということ』で「人間宣言」を行った。また、自分磨き雑誌『日経ビジネスアソシエ』(日経BP社)も10周年を迎える。安藤美冬も著者デビューする。

果たしてビジネスパーソンたちが「努力、友情、勝利」というビジネス書の方程式に踊らされ続けるのか、目覚めるのか。2000年代のビジネス書ブームとは何だったのか。今後、くるものは何なのか。激しく傍観することにしよう。

中年の説教そのものでなんだが、まず目の前の仕事をやること、目の前にいる仲間を大切にすることに目覚めよう、そろそろ。今日、サザエさんを観てブルーにならずに、明日、ちゃんと通勤電車に乗り込もう。

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常見 陽平
千葉商科大学国際教養学部専任講師

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