アメリカの本国回帰トレンドを日本にも --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

英語でreshoringの意味を調べても案外適当な訳が出てきません。とりあえず本国回帰としておきましょう。

アメリカで本国回帰が大きな流れになりつつあり産業、特に製造業の海外拠点から国内へのシフトが目に付くようになってきました。理由は海外、特に狭義の意味で中国の製造コストが上昇、運賃や労働効率性を考えればアメリカ本国で製造しても競争力を維持できるようになってきたのです。


事実、アメリカの工場労働者がこの2年で約43万人増加しています。特にアメリカ東部の人口が6割ぐらいを占めることからのアメリカ北東部に工場を作るなど輸送コストの戦略的位置づけも考えられるようになっています。また、海外自動車会社はアメリカ南東部の州にその誘致活動の成果もあり、どんどん工場を作っています。

一昔前、アメリカからは製造業はなくなったとまで言われました。極論すればモノを作るのはアジアに任せて自分達はサービスや金融などより高度なビジネスを提供すると豪語していたのです。しかし、リーマン・ショックなどアメリカ経済に一気に逆風が吹き始め、失業率は上がり、賃金は低下し、大企業が倒産していくその姿を見てアメリカはその威信と輝きを失ったように見えます。

そんな中、資源革命といわれたシェールガスがアメリカ発の技術として世界のエネルギー価格を一変させるほどの影響力を持つようになりました。私はこのシェールガス革命がアメリカの製造業復権への大きな勇気付けにつながっていると考えています。

シェールガス革命は単にガスの価格が下がるだけでなく、アメリカの資源の自給率と持続性をすっかり変えるばかりか、原油からガスへのシフトが今後進んでいき、例えば、自動車でも天然ガス自動車がホンダやフォードから発売されているのです。アメリカでは売れない電気自動車は天然ガス自動車がもう少し改良されればそちらに取って代わられる可能性すらあるのです。

そんな常識の大革命が起きている中で「アメリカでもモノが作れるのではないか?」というチャレンジが生まれたとしてもおかしくありません。電機大手GEが挑戦している国内回帰において2005年までに採用した従業員は時給22ドルだが、それ以降は13ドルといったありえなかったような賃金破壊が起こりつつあるという事実は日本のどこかで聞いたことがあるシナリオに似ています。

オバマ大統領は就任当初からドル安を誘導し製造業復権をその政策に掲げていました。大統領選挙間近になりようやくそれが目に見えた形で成果が出てきたということでしょうか?アメリカの政策は単に国内経済だけを考えているわけではなく中国というライバルとの距離感をおくための外交的政策でもあると考えています。

このreshoringを日本で考えるとどうでしょうか? 私の主張はここにあります。

福島を一大製造拠点に築き上げるというプランが可能ではないかと。まず、政府と県が税制を含めた大幅な誘致政策をとり、海外拠点からの本国復帰についてのみ、その優遇をもらえるという形にするのです。福島県民は真面目で優秀な労働力の宝庫です。新幹線のアクセスもよくその昔は第二首都構想の候補にも挙がっていたのです。

中国に進出している日本企業は必ずしも多くの会社が満足できる成果を上げていません。いや、楽天のように撤退した企業すらあるのです。政府や福島県はもう一歩知恵を絞り、発想の転換を図ってみる必要があります。文句や愚痴ばかり言わず、チャレンジしてみることを忘れてないで欲しいと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょうか?


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年5月31日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。