最近の情熱大陸はなぜ面白くないのか?

2012年06月18日 06:56

想像通りにガッカリだった。6月10日と17日に2夜に渡って放送された『情熱大陸』の特別企画「井上真央が撮る小田和正」は、実に残念な番組だった。この日に限らず、最近の『情熱大陸』にはガッカリすることだらけだ。いまや、放送回数が700回をこえるこの番組がなぜ面白くなくなったのか、考えてみることにする。


いきなり先ほどの「ガッカリだった」という発言を訂正しよう。厳密に言うならば、それでも予想以上には面白かった。なぜか?それは被写体が小田和正だったからという部分が大きいだろう。飾りっけなく話す様子、ライブでの光景、今まで撮影を許可しなかった場所での撮影などは確かに見応えがあった。小田和正のライブシーン、特に学生時代を過ごした仙台でのライブ、母校東北大学でのライブなどは胸が熱くなるものがあった。また、「音楽でやって行こうと決めたのはソロになってからだ」「以前は(大学、大学院での専攻だった)建築の世界でいくと思っていた」などの発言は視聴者にとってキャリアに関する気づきがあるものだっただろう。

しかし、放送前から予想していた悪夢、まるでお笑い芸人や相撲取りが名店の料理を食い散らかし、「美味い、美味い!」と素人の感想を言うような番組になってしまっていた感は否めない。井上真央という女優のことはよく知らないが、日本の音楽界の至宝を実に粗雑に扱われた気がしてならないのだ。小田和正は撮影が始まる前に「初めてを言い訳にしないで欲しい」と言ったが、実際にはそんな風に撮られていることは明らかだった。

井上真央の小田和正に対する接し方は、いくら芸能人とはいえ、実に失礼だった。小田和正のことをもっと勉強した方がいい。最後の質問「小田さんはいつまで続けるのですか?」というのも愚問である。「続けるまで続ける」これがミュージシャンである。『こち亀』の秋山治に、あるいは『島耕作』の弘兼憲史に「いつまで続けるのですか?」と聞くのと同様、これは失礼な質問である。

ごく個人的なことではあるが、私は宮城県仙台市生まれだし、小学校低学年の頃からの小田和正ファンである。生まれ故郷が、そして小田和正が実に粗雑に扱われていたことに憤りすら感じる。

この「○○が撮る情熱大陸」というのは、番組をなんとか存続させるための苦肉の策であったことが想像される。少しフォローするならば、井上真央だけが悪いのではなく、この日の番組は、最近の番組同様に雑だった。密着取材をウリにする同番組ではあるが、あまり密着していないことは映像を見ると明らかだった。ライブ映像でお茶を濁すのも、いつもと同じだ。サッカー選手が出れば試合シーンが、俳優が出れば舞台やテレビのシーンが長くなるのと一緒ではある。

情熱大陸は以前は、「こんな素敵な人がいたのか」という意外な人選、圧倒的な密着取材、「ここまで撮るか!」という衝撃的なシーンなど、常に驚きと感動があったものだった。情熱大陸出演経験のある方に聞いたが、密着取材度が低下したと言われ始めた頃の出演だったのにも関わらず、温厚なその方が5回切れたというのだ。だが、最近は明らかに予算と情熱が減っていて、著名人のプロモーション目的かと思うような人選、内容が増えてしまっていた。この「○○が撮る情熱大陸」は苦肉の延命策だと感じた次第である。これは別に同番組に限らず、テレビが直面している課題である。

しかし、番組の権威はそれなりに残っていて、勝間和代氏が「すごい人」である根拠の1つはこの番組に出たことだったし、ネットワークビジネスへの関与疑惑で揺れる安藤美冬氏のブレークが決定的になったのもこの番組である。思うに、最近のテレビを見ていないが故に、以前の番組の権威がまだ生きているという構造になっているのではないだろうか。これもまた、テレビの問題だと言えるだろう。

こういう私は、今も「いつかは変わってくれるのではないか」「面白いものがあるのではないか」と期待して、毎週、録画してみている。

今度の同企画は「石橋貴明が撮る錦織圭」だそうだ。ぶっちゃけ、石橋貴明を撮って欲しかったのだが、今度こそ手抜きは許さない。番組関係者に情熱が戻ることを一ファンとして熱望する。そして、アゴラライターとして、いつかは池田信夫先生に密着して頂きたいと願っている。

このままだと情弱大陸になりますぞ、本当に。頼みますぞ。

試みの水平線

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常見 陽平
千葉商科大学国際教養学部専任講師

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