「プログラムは転売できる」判決の及ぼす影響

山田 肇

欧州司法裁判所が興味深い判決を出した。プログラムを購入した者は、自らのPCからプログラムを消去しさえすれば、そのプログラムを他に転売できる、というものだ。これを伝えたITmediaは、記事のタイトルを『「デジタル古書」が間もなく実現か』とした。

欧州での争いはOracleとUsedSoft間でのクライアントサーバプログラムを巡るものだが、ITmediaのように電子書籍におきかえると確かにわかりやすい。紙の書籍を古書店に売ることについて何の制限もないし、古本は自由に閲覧できる。電子書籍も同様に古書店に転売できるし、古電子本は自由に閲覧できる、というわけだ。


電子財も有形財と同様に扱うべきというのが判決の考え方だが、今後、大きな影響を生む可能性がある。コンテンツ提供者はDRM(コピー制限技術)を用いて移動や転売などを制限してきたが、これができなくなる。電子財は複製が容易なため著作権が侵害される恐れがある、というのがDRMを施す理由だった。しかしこれは供給側の理屈に過ぎない。利用者は、購入した(自分のものにしたはずの)コンテンツが他のデバイスに移動できなくて困っていた。その制限が突破されれば、利用者はもっと自由に電子財を扱えるようになる。

数日前に、音楽各社がインターネット配信した楽曲のDRMを年内にも廃止する、というニュースが流れていた。利用者のニーズに合わせる形で電子財が提供されるようになるのは、好ましいことだ。欧州司法裁判所の決定も同じ方向を向いている。これで、電子財の市場はいっそう拡大していくだろう。

山田肇 -東洋大学経済学部-