日韓関係を修復する決め手は朝日新聞社長の辞任

2012年08月26日 13:45


虚構新聞に秀逸な記事がある。最後の「本紙の更なる発展のため、誤報、捏造報道のノウハウはむしろこちらが教えを乞いたいほど。最近スキューバダイビングの免許も取った」という落ちは、サンゴ事件のことだ。朝日新聞の捏造事件としては伊藤律架空会見も有名だが、植村隆記者の従軍慰安婦捏造は日韓関係を大混乱に陥れた日本の新聞史上最大の誤報だろう。


慰安婦問題を報じたのは、朝日が初めてではない。1983年に吉田清治が『私の戦争犯罪』という本で「慰安婦狩り」をやったと書き、これについては他の新聞も雑誌も報じていたが、それを裏づける証拠がないため、都市伝説の域を出なかった。1991年8月に福島瑞穂氏がマスコミに金学順の「証言」を売り込んできて、NHKなど各社もその証言は報道したが、それだけでは50年前の売春婦の話にすぎないので、そこそこの扱いだった。

ところが植村記者が、これを吉田清治の話と混同して「軍が挺身隊として強制連行した」と報じたため、問題が大きくなった。正直いって私は当時「抜かれた」と思って関係者に取材したが、吉田の本にはおかしな点が多く、地元紙が捏造だと報じていることもわかったのでNHKは追いかけなかった。たぶん各社も同じだろう。そもそも「女子挺身隊」というのは工場に勤労動員する制度だから、歴史的知識のある人ならすぐ間違いだとわかるはずだ。

ところが1992年1月11日の「慰安所 軍関与示す資料」という朝日の記事が致命的だった。このときも植村記者は「挺身隊の名で強制連行した」と書いている。彼はおそらく軍の「関与」を示す通達が強制連行の証拠になると考えたのだろうが、この通達は業者に慰安婦を誘拐するなと指示するもので、むしろ強制連行の反証だ。史料の解釈については、彼が吉見義明氏にミスリードされた疑いが強いが、8月の記事から5ヶ月たっても「挺身隊」という単純ミスさえチェックできなかった社会部デスクにも責任がある。

ところが政府の調査で強制連行の証拠が出てこなかった後も、朝日はこの誤報を訂正していない。吉田清治の話が嘘であることは1997年の記事で認めたが、その後も「北朝鮮の拉致と同じ」だとか「慰安婦の生活は『強制的な状況の下での痛ましいもの』だったことは否定しようがない」などと開き直っている。

なぜ朝日はこれほど誤報が多いのか、というのは間違った問いである。絶対数としては、朝日の誤報はそれほど多くない。こういう「勇み足」が多いのは毎日新聞で、これは管理職が少なく品質管理が行き届かないためだ。読売の巨人軍に関する記事などもバイアスが強いが、これは「主筆」が私物化しているからで、誰も真に受けない。朝日の誤報が大きな影響をもつのは、その報道の信頼性が高いからなのだ。

慰安婦については朝日は時効だと思っているのかも知れないが、韓国が執拗に蒸し返してくるので罪は消えない。朝日が「挺身隊は誤報でした」と訂正すれば、「挺身隊問題対策協議会」という団体で運動している韓国人も根拠を失う。サンゴ事件では当時の一柳社長が辞任したが、今回の問題の大きさはサンゴとは比較にならない。木村伊量社長が謝罪して辞任すれば、韓国の誤解を解いて関係を修復する上で大きなインパクトがあるだろう。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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