日韓関係を値踏みする米国の態度 --- 森中 定治

2012年09月03日 07:30

2012年8月10日に韓国の李明博大統領が竹島に上陸しました。そして慰安婦の問題で日本政府の姿勢に失望して竹島上陸の最終決断につながった可能性が高いと報じられました(朝日デジタル国際、2012.8.25)。

一方、米国の代表的知日家であるアーミテージ(元米国務副長官)への日経新聞のインタビューで、同社編集委員、春原剛氏の従軍慰安婦や歴史認識についての問いに対して、「条件に応じて取り組まなければならない。事実はただ一つ。それは悪いことであり、実際に起こった。そして日本人の何人かが責任を負っている。それで話は終わりだ」と答えています(日経、2012.8.25)。


このアーミテージの見解は、韓国の主張そのままです。「事実はただ一つ。それは悪いことであり、実際に起こった」とアーミテージが断定する根拠はどこにあるのでしょうか。その証拠はあるのでしょうか。それは起こっていないというのが日本の歴史認識であり、このアーミテージの発言を見る限り、米国は日本の主張を全く考慮していないと言わざるを得ません。日本の盟邦である米国が、どうしてこういう発言をするのでしょうか。

日経新聞の記事を読むと、米国は、北朝鮮問題に対し日韓の協力を強く希望しています。それこそが大事なのであって、日本軍による慰安婦の強制連行があったかなかったか、真剣に突き詰め真実を知ろうとする姿勢は、その記事から全くうかがうことができません。誤解を恐れず端的に言えば、米国にとってそんなことどうでもよいし、何十年も昔のこと、実際真実など分かる筈がないでしょう。橋下大阪市長が、それがもし事実ならその証拠を出せと言っていますが、たとえ生き証人を探し出しても、年寄りの妄言だとか、でっち上げだとか言って認めなければ証拠にはなりません。それが真実であると証明することは殆ど不可能でしょう。

相互に相手の主張を認めようとする前向きの姿勢がなければ、相互の納得と合意はできません。そんな過去のまだらっこしいことより、米国は、イージス艦の情報共有のために日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が必要なのであり(毎日新聞、2012.8.30)、それを切望しているようです。野田首相はこの協定を拒絶しました。

李大統領は、この協定を道具に使って慰安婦問題の真実などどうでもよい米国を味方に付けたのではないのでしょうか。そして米国が味方についたことを確認したうえで、竹島上陸を行ったのではないのでしょうか。いろんなことがまことしやかに言われます。李大統領を取り巻くスキャンダル、選挙に向けて不人気の挽回、ポピュリズム……それらもあるのでしょうが、米国が後ろ盾になれば韓国は日本には絶対に負けません。逆に日本は絶対に勝てないでしょう。李大統領は、ポピュリストどころか、非常にクールな思考の基に一連の行動を行ったと、私には十分推測ができます。

こういう視点から、もう一度上記のアーミテージの言葉を考え直してみると、「我々は、慰安婦や竹島に関する真実などどうでもよい。韓国は自国の正義のために我々に○○を支払った。日本が韓国よりもっと高く支払えば、いつでも正義は日本のものだ」、こう言っているように聞こえます。

米国の誘いに乗って、韓国と日本が正義の買い値をつり上げてゆく。それが両国民にとって本当に望ましい結果を生むかどうか、それはよく考えてみる必要があります。

しかし、いずれにせよ、近視眼的な視野ではなくて、上記のアーミテージの言葉からこういったメッセージを読み取り、そのうえで冷静で俯瞰的、かつ人間らしい対処を日本の著名な政治家や外務省に求めることは、木に登って魚を求めるようなものでしょうか。

森中 定治

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