シンガポールと日本の明暗を別けたもの

2012年09月07日 15:47

一人当りのGDPであっさり日本を追い抜いた後もシンガポール経済は好調を持続している。取分け、リーマンショック後の伸びは絶賛に値する。シンガポール政府舵取りの巧みさの結果であろう。


それに引き替え、相変わらず日本は冴えない。嘗て世界に強さを誇ったエレクトロニクスも、シャープに代表される家電を筆頭に生き残りに呻吟している。

来年にはエレクトロニクス業界は韓国、台湾企業の草刈り場となり、一方、商品の商流たる家電量販では百円ショップ同様メイドインチャイナが製品の主流となるであろう。

それでは、一体何がシンガポールと日本の明暗をかくも明瞭に別けたのであろうか?

「政治力」の差ではないのか?

日本では選挙が近いとされている。政権与党の民主党は、本来今の時期、政権を預かったこの三年間の問題、課題を精査し、今後の政策に反映すべきなのである。

しかるに、伝える新聞社の脚色も幾分あるかも知れないが、“選挙のイケメン”どっち? 「いろんな意味で、唯一の争点は『カオ』」等と言った愚行に余念がない。

これでは全くAKB48の総選挙と何ら変わらない。民主党議員の知能レベルはきっとAKB48支持層と良い勝負なのであろう。

こう言う事であれば、国民は民主党にさっさと見切りを付けて、最大野党の自民党を支持すれば良い筈である。しかしながら、自民党に就いては、自民党はこの3年間一体何をしたのであろうか?で説明した通り、この上も無く下品で恥知らずである。とても支持出来る政党ではない。

露骨に言ってしまえば、「日本の政治レベルが余りにお粗末で話にならない」のである。

翻って、シンガポールは如何であろうか?

聡明さで有名な、副首相で財務大臣を兼任するTharman SHANMUGARATNAM 氏が昨日行ったスピーチのテレビ映像を実際に視聴してみた。

日本の首相や閣僚が役人の書いた原稿を棒読みするのとは違い、自分で書いたのであろう簡単なメモを頼りに、手振り身振りを交え、実にしっかりと自分の言葉で説明している。それ故、声に力があり表現に説得力がある。

スピーチの中身で先ず共鳴したのは「経済発展」は必要との主張である。これにより、低所得者層を中流に押し上げ、これにより貧困層が希望を持てる様にする事で社会を活性化すると言うのである。

次に、経済発展の恩恵から落ちこぼれる国民への対策にも熱心である。「Inclusive Growthが必要」と言うフレーズが何度も繰り返される。これを意訳すれば、シンガポール政府は経済の繁栄から脱落する国民が出ない様、今後も関与を続けると言う決意表明と解釈する。

「勝って兜の緒を締めよ」と言う諺があるが、これ程の政治、経済の成功を収めて尚、緊張感を持って国内の統治に当っていると言う事であろう。

勿論、若者の失業対策にも問題意識を持って対処している

「経済の成長は必要である」との結論が先ずありきなので話が判り易い。

そして、経済成長には「陰」、詰まりは「落ちこぼれ」が出るので放置せず緊張感を持って対応する。「Inclusive Growthが必要」の中身である。

そして、Inclusive Growthには財源が必要でその為には経済成長が必要と言う最初の結論となる。

仮に、シンガポール政府であれば「原発再稼働」等即決するに違いない。

TPPは当初からの参加国である。

「消費増税」はそもそも恒久的な財政黒字で必要ないが、仮に必要となれば即座に決断し日本の様に傷口を広げる愚行を行うとは思えない。

隣の家の芝生は青いと言うが、そういったバイアスを差し引いてもシンガポールは万時に巧く対処していると思う。ここでは、日本の政治に付き物の「グダグダ」とか「決められない政治」とかは存在が許されない様なのである。

それでは、シンガポールの政治レベルが高いのは何故であろうか?政治家の「質」が高いのだと思う。ちなみに、今回参照した、Tharman SHANMUGARATNAM 氏の学歴と職務履歴を検証してみる。

学歴としてはイギリスの名門大学であるケンブリッジで経済学を学び、次いで、アメリカのハーバード大学でPublic Administrationを専攻している。

Tharman did his undergraduate and masters education in Economics at the London School of Economics and Cambridge University. He later obtained a masters in Public Administration at Harvard University, where he received the Lucius N Littauer Fellow award for outstanding performance and leadership potential

一方、職務履歴としては政治家に転身する迄は、財務省、中央銀行での実務に携わっている。

He spent much of his earlier professional life at the Monetary Authority of Singapore (MAS), Singapore’s central bank and integrated financial regulator, where he was chief executive before entering politics in 2001. He has served in economic and education appointments since then, including five years as Minister for Education. In May 2011, he was also appointed Chairman of MAS. Between May 2011 and July 2012, he served additionally as Minister for Manpower.

民主党の閣僚達がまるでヘリコプターで役所のトップに舞い降りたのとは真逆ではないか?民主党の閣僚は役所の組織や実務を知らず、所詮、何処まで行っても「お客さん」に過ぎない。

一方、シンガポールの閣僚は山の麓から自分の両足で頂上迄登って来ているのである。実務に精通し、役所に睨みを利かすのは当然であろう。

日本の政治の現状を見る限り、幾ら選挙を繰り返しても何も変わらない。寧ろ、選挙の度に劣化し、やがて政治そのものが朽ち果てて行く様に思う。そして、その内シンガポールの背中が見えなくなるのではないか?

就いては、一度成功しているシンガポール型の統治機構を徹底的に分析し、日本も出来る限り取り入れてはと思う。日本に残された時間は少なく、急ぐべきであろう。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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