反イスラム映画に端を発した動乱は終焉に向かっているが、尖閣に端を発した対日暴動と略奪は一向に終わりそうにない。両者の違いの背景とは?

2012年09月17日 12:35

全くの偶然であるが、同じ時期に二つの異なった「ヒステリー現象」を見る事になってしまった。

先ず最初は、稚拙極りない反イスラム映画に端を発した反米暴動である。アメリカのリビア大使が殺害された悲惨な事件は、今尚記憶に新しい。

リビア、エジプト、チュニジア、イエメン、そしてスーダンと米大使館が襲われるに至り、全世界のイスラム国家に波及する事態を危惧された方も多かったのではと推測する。


今一つは、昨日アゴラ記事として発表した、尖閣を起因とする中国反日デモと日系企業への襲撃、略奪である

この両者に共通するものは、市民の政治権力の腐敗に対する憤り、広がる格差に対する不満と言った所であろう。

一方、違いは実に顕著である。中東の動乱が鎮静の方向に向かいつつあるのに対し、中国の方は、現状先行き不透明、視界不良と言うしかない。

この両者の違いの背景とは一体何であろう? これをきちんと理解する事が、今後の対中外交立案上の一丁目一番地となるのではないか?

私は、事態鎮静化に向けての中東と中国指導者の態度、姿勢の違いと理解している。

イエメン、チュニジアの特命全権大使を歴任された野口先生の一昨日のブログ、反イスラム映画(チュニジア大統領の冷静で勇気ある発言)が実に興味深い。

チュニジアのマルズーキ大統領発言を、現下のアラブ世界を覆う熱と云うか狂気の中で、冷静かつ勇気ある発言と思うのでとの注釈付で下記伝えている。

我が国の宗教的過激派の行動は超えてはならない一線red line を越えた。我々がそのため長いこと戦ってきた権利と自由を脅かすのみならず、国際関係を脅かし及び国際社会における我が国に対する悪印象を植え付け、国益を害する、このようなサラフィー主義者の行動を政府は即時中止させねばならない。チュニジア国民に対しては、国家の法律の上に別の法律を押し付けようとし、宗派対立を利用しようとするサラフィー主義者を非難し、冷静を保ち、自己抑制をし、我が国の安定と治安を守るように呼びかける。なぜならそれが祖国再建の重要な礎石だからである。宗教過激派は数月の間、議論や選挙で獲得できなかったものを暴力で押し付けようとしてきた。自分(大統領)は、軍隊及び内務省に対し、共和国と革命を守り、国際社会におけるチュニジアの尊厳を守るために総ての必要な措置をとるように命令した。我々は、群衆の怒りを理解し、それと感情を共にするものであるが、それはあくまでも平和的に法律の枠内で主張する限りにおいてである。それが我々の友好国の大使館に対する攻撃となる場合には、絶対に許すことのできないことである。クリントン長官は自分に対して、オバマ大統領も米政府も、件の映画を非難し遺憾と思っていることを確言してくれた。米国政府も米国民も無責任な個人の行動に対して、如何なる責任も有していない。

全体を客観的に俯瞰すると共に、問題点を冷静に分析している。その上で、チュニジアが国家として取るべき対応、チュニジア国民がなすべき事を説いている。

この勇気ある発言により、イスラム原理主義者やアルカイダ等の過激派に命を狙われる事になるに違いない。これは、過去の中東の歴史を見れば確実であり、それ故に欧米諸国は挙ってマルズーキ大統領を賞讃したのだと思う。そして、他のイスラム国家の指導者も、事態鎮静化に向けそれなりに努力している。

翻って、中国政府の対応である。略奪被害の映像を見る限り、本気になって暴動と略奪を止めようとしているとは、とてもではないが見受けられない。率直に言えば、「容認」していると推測する。

それにしても、中南海の内部は一体どうなっているのだろうか? 9月17日と言うのに、未だに中国共産党大会の日取りが発表されないと言うのは異常以外の何物でもない。

権力を継承する予定の習近平氏が、9月1日から15日に中国農業大で行われた行事に出席するまで、公の場所に姿を見せていないのも、何やらきな臭い物を感じる。

飽く迄個人的な推測であるが、中南海内部で深刻な権力闘争が繰り広げられているのではないか? そして、そのカムフラージュの為に対日デモが利用されているのではないのか?

仮にそうであれば、日本としては迷惑千万な話と言うしかない。そして、日本がどれ程事態収拾に努力しようが、中南海での権力闘争が決着し、中国共産党大会の日取りが発表されるまでは進展はないと思う。

外務省在外公館の仕事は、本来こう言った情報の入手と分析の筈であるが。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締

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