中国がなりふり構わず動き出した危うさ

大西 宏

中国メディアがしきりに尖閣問題で国有化した日本政府を非難し、海洋監視艇が尖閣領海を示威航行する、そして中国の各地で起こったデモと略奪、破壊、放火。
さらに大量の漁船で尖閣の領海に向かおうという流れを冷静に見ると、出来過ぎています。そして出来過ぎている話には裏を感じます。
さらに、真偽の程はわかりませんが、中国のネットには、この暴動を煽っていたリーダーは中国公安当局の人だと写真まで流れていたといいます。
<赤龍解体記>(83)反日デモ 私服警察が組織し、暴徒化あおる – (大紀元) :


中国政府は本気で騒動を起こし、ナショナリズムでなにかを乗り越えようとしているのでしょう。あれだけの不法がまかり通る国、危ない国というイメージが世界に広まり、中国にとっても好ましくないことを中国政府もわかっているはずですが、それでもあえて反日でナショナリズムを炊きつけ、何かから国民の目をそらす必要があったということでしょう。

今年の共産党大会で政権のトップに就く習近平副主席が2週間も姿を消し、姿を表したのが15日と反日デモと重なったタイミングで、また肝心の党大会の日程が調整中だというのも不自然で、なにかが起こっていることを感じさせます。水泳中に背中を負傷し、医師の指示に従い療養していたとも、他の病気治療のためとも言われていますが、水泳中に負傷で2週間の療養とはどんな負傷なのかと疑いたくもなります。

内外の急速な経済悪化が、中国政府を追い詰めてきているはずです。不動産バブルの崩壊があちこちで囁かれるようになり、また地方政府は巨額の借金を背負った状態。中国、昨年のGDP実質成長率を上方修正したとは言っても、2桁を割り、輸出にたよる中国経済を考えると、さらに成長鈍化が避けられません。経済成長が止まると、経済格差で取り残された多くの国民の希望がなくなり、さらに不満がたかまります。
経済危機を前にして、おそらく共産党内の亀裂も生じてきているのでしょう。
中国不動産バブル崩壊の危機 オフィスビルや商業施設が「ゴースト化」 : J-CASTニュース :

2年前に起こった中国漁船による尖閣沖衝突事故後の反日デモは続かず終わると感じましたが、今回ははるかにたちが悪く、なりふりかまわぬ中国政府の出方をみると、簡単には収まりそうにもなく、最悪は南沙諸島と同じように漁船による尖閣のっとりも覚悟する必要があるかもしれません。
大西 宏のマーケティング・エッセンス : 中国の「反日祭り」はきっと続かない – ライブドアブログ :
それにしても、このタイミングでも購入を言い出した石原都知事といい、国有化を決めた野田内閣といい、けんかの仕方のひとつ知らないようです。それで中国にプレゼントをしてしまったとしかいいようがありません。こうなったら打つ手の自由度が狭められ、徹底防戦の道しか残されていません。

安易なナショナリズムで困難を乗り越え、政権を維持しようという世界的な流れがありますが、中国はその典型に走ろうとしているのでしょうか。それは、やがて中国の首をみずからが締めることになります。
日本の中でも、経済のグローバル化の影響を政治で遮断しようとする奇妙な経済ナショナリズムを唱えている人がいますが、現実のグローバル化は経済、社会、産業の深い流れであり、それを乗り切る知恵が今求められているのだと思います。