やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識

池田 信夫

やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識原発事故から1年半以上たって、ようやくパニック状態はおさまってきたようだ。もともと科学的根拠のない恐怖だから時間とともに減衰するのは当然だが、私の予想よりそのスピードは遅かった。上杉隆氏のように、おさまりかけた恐怖をあおって商売する人々がいるからだ。しかし最近のTogetterを見ると、彼を嘲笑する意見が圧倒的で、もはやまともに相手にされていない。武田邦彦氏もマスコミから姿を消し、今やネタである。


気持ちの落ち着いた放射能ママは、本書を読んで正確な知識を身につけてほしい。これは著者のウェブサイトで全文が公開されているPDFファイルを出版したものだ。自然科学の立場から放射線をやさしく解説し、福島の線量データと照合して「放射線被曝のために健康を害する人が目に見えて増えるということはないだろう」という結論を出している。

現地調査を行なった高田純氏も書いているように、福島の線量はチェルノブイリの1/1000以下で、浪江町や双葉町なども帰宅可能である。本書は科学的データに特化しているが、経済的な費用対効果で考えると、1mSvまで除染することには意味がなく、ほとんどの地域は避難指示を解除したほうがいい。

しかしマニフェストが全滅した民主党は「脱原発」以外に次の選挙の看板がないので、矛盾だらけの原発ゼロ政策にこだわっている。自民党は甘利政調会長・細田総務会長という「再稼働シフト」を敷いたのに、安倍総裁は再稼働にも避難解除にも慎重だ。ある国会議員は「選挙までは原発は封印するしかない」という。愚かな国民は、愚かな政治家しか持てないのだろう。