上杉隆氏と「謎のD氏」

2012年10月24日 23:14

ダイヤモンド社にハシゴをはずされ、ネット上で総攻撃を受けて、上杉隆氏の話は二転三転しているが、きょうはとうとう論理が破綻してしまった。おもしろいから、彼の妄想が事実だとするとどうなるか、考えてみよう。


彼がきのうNHNに出した通告書を書いたのは「代理人弁護士」らしいが、名前はどこにも書いてない。文体も「盗用じゃない」と感情的に繰り返すだけで、法律も判例も引用してないアマチュア的なものだ。私も自慢じゃないが内容証明をもらったことは何度もあるが、こんな笑える文面は見たことがない。

本書面到達後3日以内に記事の削除がなされない場合には、上杉氏は貴社に対し、自らの名誉を回復し、業務妨害に対する損害賠償等の請求などを求めて、法的措置をとらざるを得ない旨決意しています。

これは典型的なブラフである。「3日以内」と期限を切っているのに「・・・決意しています」だから、決意だけして訴えなくてもいいわけだ。それにBLOGOSはこの記事を転載しただけで、オリジナルは私の個人ブログである。かりにNHNが削除しても、私のブログ記事とアゴラの記事は残るのだが、これはどうするのだろうか?

さらに「盗用」というスクープを放ったのは上杉Wikiなのだが、彼はこれにまったくふれないで、NHNに的をしぼっている。これはおそらく私がダイヤモンド社に抗議したのと同じようにNHNから譲歩を引き出そうとしているのだろうが、あいにくNHNも上杉氏の記事は著作権侵害だと思っているので、相手にする気はない。

「盗用は真実ではない」とこの「弁護士」は主張するのだが、その理由は「池田氏が上杉氏に取材してない」と繰り返すだけだ。取材したかどうかなんて真実性と何の関係もない。昨年3月19日の読売の記事と上杉氏のメルマガの3月23日の記事(およびダイヤモンドの9月22日の記事)が全角スペースに至るまで同一だというだけで、著作権侵害と断定する証拠は十分だ。19日の記事を23日のメルマガにコピーすることは容易だが、その逆は不可能だからである。

おまけに最初は「著者調べ」としていたのが「ラジオの話」とか「ツイッター」などと変遷し、最後は「情報提供者」が出てきた。それが誰であるかは明らかにされていないが、きょうの上杉氏のウェブサイトでは、「D氏」という謎の人物が登場した。

上杉隆はメールにて情報提供者D氏より、同一情報を入手し記事にしております。当時のD氏より入手した電磁記録(メール)を事務所としても確認をいたしました。またD氏に再度確認したところ提供情報は独自取材であるとされております。

だったら簡単だ。そのメールを公開すればいい。そういう証拠があれば、私は著作権侵害という断定を撤回して謝罪するといっているのだが、上杉氏はそれを見せない。当たり前だ。上杉氏のいう読売新聞発売前のメールは存在しないからだ。

もしそのメールが存在するとすれば、それは3月19日以前に作成された、読売の記事と同一のリストだろう。読売は「ウェブサイトだけでなく通信社や各国特派員の情報なども総合した記事だ」と答えているので、それと同一のリストをもつ人物は読売の社員しかいない。それも全角スペースが入るのは読売オンラインだけなので、そのスタッフしか同一のファイルは入手できない。

つまり上杉氏の主張通り、読売新聞発売前の情報提供者がいたとすれば、読売オンライン編集部のスタッフがウェブサイト用の決定稿を上杉氏に横流ししたということしか考えられない。だとすると「D氏」のやったことは到底許されるものではなく、彼は懲戒解雇されるだろう。それを「著者調べ」としてメルマガに掲載した上杉氏も同罪だ。

だから嘘の上塗りをしないで著作権法違反を認めたほうが、はるかに罪は軽いのだ。「D氏の情報源を知らなかった」とか「ミスだった」という話は、彼が自分の署名で記事を書いている以上、通用しない。自分でもいっているように、これは「即廃業」に値する著作権侵害だから、潔く元ジャーナリストも廃業してゴルフに専念することをおすすめする。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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