就活報道が変わり始めた 就活ですくすくと育つ学生たちも

2012年11月30日 14:57

11月30日だ。明日から2014年度新卒の採用広報活動がスタートする。この場をかりて、大手マスコミの方に言いたい。就活を丁寧に報道して欲しいのだ。実際、一部のメディアの就活報道は単なる「かわいそう論」から変化し始めている。事実上の就活解禁を前に、よもやま話とともにお伝えしよう。


■「短期化」で若者は幸せになるのか?
メディアにとって就活というのは便利なコンテンツで、かわいそうな様子を報道すると共感を得ることができる。合同説明会に集う学生や、就職ナビがつながらず混乱する学生の様子を伝え、識者と言われる人たちの言いっぱなしの新卒一括採用批判を紹介して一丁あがりだ。

しかし、今年は少し違う。

まず、就活の「短期化」を批判する論が出始めている。

経団連の倫理憲章の改訂により2013年度の新卒採用より、採用広報スタート時期が大学3年の10月1日から12月1日になった。学業への配慮、就活の早期化・長期化是正が目的だったのだが、当初から採用担当者および大学職員からは「企業理解が進まないのでは?」「大手企業にしか目が向かない」「ミスマッチにつながるのでは?」という意見が出ていた。

実際、就職情報会社各社の2013年度採用振り返りレポートでも、学生の企業理解不足、自己分析不足を指摘する企業の声が散見された。また、エントリーはスタート直後に大手に集中する傾向が顕著だった。
※ただ、私はこの点において、学生が中堅・中小企業を受けないことを批判するわけではない。理由はこちらにまとめたのでご参考までにご覧頂きたい。
http://newsdig.jp/w/2218

2012年11月28日付の日本経済新聞は就活時期の変更に関する変化について

「学業との両立が進んだとの評価がある一方、企業と学生の接触する時間が短くなったことへの懸念も出ている。採用のミスマッチを防ぐため、企業にインターンシップの活用や選考期間の延長などの動きが広がっている。」

と報じている

またマイナビの調査をもとに

「短期化が採用活動にマイナスと答えた企業は748社中74.1%にのぼった」

と伝えている。

個人的にヒットだったのは、福井新聞の11月25日付の社説である。
就活1日解禁 短縮でミスマッチの懸念
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/editorial/38216.html

県内の学生や大学関係者の顔を見た、現実的な論だと言える。

このように、単なる短期化が若者を救わないことを報じたことは大きく評価するべきである。実際、大学職員の悩みは就職ガイダンスの参加者数が「順調に減っている」ことだ。2ヶ月短くなっただけで、大学の仕組みが変わらなければ劇的に勉強するようになるわけでもあるまい。学生の就活する権利も意識したい。

■ブラック企業を許さない
就職難につけこんで、ブラック企業がますますはびこってきているが、これについて批判する論が新聞に掲載されるようになったことも大きな変化だと言える。

2012年11月というのは、ブラック企業粉砕に向けた大きな一歩だった。日経の1面にブラック企業という言葉が載ったのだ。この言葉が存在し、日経に掲載されること自体、我が国の労働の劣化が進んでいることを証明しているのだが。

11月26日の信濃毎日新聞の社説も「ブラック企業」問題に触れている。

ネットニュースなどでの面白がった扱い方をこえて、メディアが社会問題として取り上げていることは評価するべきだろう。

■就活は原点に回帰している
さて、その就活だが、メディアはそろそろ、合同説明会に集まる学生や、リクナビで予約が取れずに苦労する学生の様子を伝え、「大変です・・」と連呼させるテンプレートをやめた方がいい。この光景というのは、すべての学生にとって一般的なものではないし、企業もここに力を入れているわけではない。

このエントリーを読んで頂きたい
NEWSポストセブン|2014年新卒の就活「企業の就職ナビ離れ」がさらに進むと専門家
http://www.news-postseven.com/archives/20121125_156433.html
※なお、専門家というのは私が名乗っているわけではなく、編集部がつけたものだから、ここに過剰に反応しないように

ポイントは
・企業の就職ナビ離れが進む。
・就職ナビや大規模な合同企業説明会よりも、学内企業説明会、個別企業説明会を重視。
・インターン、早期型セミナーでの早期接触、囲い込みが顕著。

新卒採用は、リアルな場での個と個のつながりに回帰している。企業も就職ナビに期待しなくなっていることは明らかだ。逆に言うと、メディアが紹介するような就活をやっている学生は苦労しているわけだ。

なお、倫理憲章による後ろ倒しの影響もあるのだろうが、学生の上でも就職ナビ離れは顕著だ。先日行われた、大学職業指導研究会では、リクナビ、マイナビ、日経ナビの3編集長のパネルディスカッションが開かれたのだが、主題は「大学生の就活ナビ離れ」だったという。

つまり、メディアが報道するやり方では内定が出ない時代になりつつあるとも言えるわけだ。

メディアの就活報道自体が、内定が出ない状態を再生産していないだろうか。また、学生を過度に萎縮させていないだろうか。学生が就活に苦労している実態は私も直視しているが、企業が重視していない施策を「これが就活だ」と言わんばかりに報道するメディアも罪だと思うのだ。

■「就活は楽しい」というもう一つの現実
もう1つ、触れておきたいことがある。

それは「就活は、楽しい」というもう一つの現実だ。

12月8日に発表する新作『「意識高い系」という病~ソーシャル時代にはびこるバカヤロー~』(ベスト新書)で詳しく述べているのだが・・・。実は、就活を楽しんでいる層というのは、毎年、一定数以上いるのである。文化系トークラジオLifeに出演した際も、話題になった。

株式会社マイナビが毎年実施している調査で就活を表現する漢字というものがある。
「2013年卒 マイナビ学生就職モニター調査 7月の活動状況」をもとに考えてみよう。

http://saponet.mynavi.jp/enq_gakusei/monitor/data/monitor_2013_8.pdf
就活を表す漢字は基本、苦しい系のキーワードが多いものの、実は「楽」という漢字が上位に入り続けている。

2013年卒の就活を表す言葉の1位は「苦」だったが、男子では文系、理系ともに「楽」が1位となっているし、女子でも、やはり文系、理系ともに2位になっている。

基本的に「苦」「迷」「耐」「疲」などの苦しい系キーワード、「縁」「運」など運命系キーワードが目立つが、「楽」「知」「学」「動」などの前向き系キーワードも多くランクインしている。特に「楽」が2位に入っているのは印象的だ。

10年間の推移を見るとより明確だ。2003年卒を覗き、9年にわたって「楽」はベスト3に入り続けている。他にも、「笑」や「縁」「動」「知」「素」「学」など、前向き系、運命系キーワードも入り続けている。

注目されるのは、広義の就職氷河期と言われる03年~05年卒でも、リーマンショックの影響を受けた10年~12年卒でも「楽」はベスト3に入り続けているということだ。要するに求人環境が悪化していようと、就活をやってみたら、結果として「楽しかった」という声が多数だった。もちろん、ベスト10の中には苦しい系のキーワードの方が目立つのであるが、一定層は就活を楽しんでいることが感じられるデータである。

「楽」の理由を見てみると、予想どおりではあるが、思ってみたら予想よりも楽だったという声の他、大変だと思ったら様々な経験ができて楽しかった、楽ではないが楽しかった、楽しんで行うことができたという意見が散見される。私の問題意識同様、「メディアは煽りすぎでは」という意見も見受けられる。

もちろん、この調査は、文字ごとの投票数がかなり分散しているので、あくまで参考にしかならないが、やってみたら楽しかったというのも一定数いるわけである。

「就活を楽しんでいる層」もいるのだ。

社会や企業の現実は知ることができるし、経営者やデキる社会人の話だって聞くことだってできる。インターンシップでは、自分の力試しができる。就活セミナーも結構楽しい。自分の将来を真面目に考えることだってできる。就活の試験をクリアしていくのも自分の力を試すことができるし、ゲーム感覚で楽しい。仲間だって沢山できる。気づけば、就活が大好きでしょうがない人がいるわけだ。

就活が大好きすぎて、前のめりすぎて、空回りする「意識の高い学生(笑)」という人たちもいるのだけど。

というわけで、就活が始まるわけだが、メディアには事実を丁寧にみた報道を期待したい。言いっぱなしの新卒一括採用廃止論、大学擁護論に終わらず、多面的に捉えて頂きたいのだ。報道により、学生を萎縮させるのもどうかと思うだ(もちろん、大変な現実というのもあるのだけど)。

何よりも私達が、現実を直視しよう。

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常見 陽平
千葉商科大学国際教養学部専任講師

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