自民党が圧勝した、というより民主党が惨敗した。投票率が60%未満で自民の得票率が30%台と推定されるので、絶対得票率は20%程度。これは政治に絶望した無党派層が、民主も自民も含めて、政治を見放したということだろう。特に「卒原発」を掲げた未来の党が61議席から9議席に激減するなど、民意は「脱原発」より景気回復を選んだ。
安倍首相は麻生副総理・財務相で積極財政に転じるともいわれるが、今の財政状況で無理に国債を大量発行すると、長期金利が上昇に転じるおそれがある。それより経済成長を阻害している最大の要因は、エネルギー制約である。52基の原発が止まったままで真冬の北海道で7%節電が求められるのは異常であり、人命にもかかわる。
これを解決することは容易である。民主党政権の行なった超法規的な原発停止を解禁し、法にもとづいて再稼働すればいいのだ。昨年5月に菅氏が浜岡原発を止めて以来、民主党政権は原発の停止について1本の法律も閣議決定も出さず、非公式のメモで再稼働を止めてきた。これによって今までに失われた国富は5兆円を超す。
民主党政権も国会で認めたように、この停止措置には法的根拠がない。原子炉等規制法では、欠陥の発見されていない原発を予防的に止めることは認められていないのだ。原子力規制委員会の新基準ができるのは来年夏といわれているが、それまで待つ必要はない。新基準を適用して現在の運転を止めるのは、技術基準の違法な遡及適用である。
安全規制の強化が必要なら国会で立法すればいいが、それまでは現行法で運転することが法治国家の常識だ。定期検査に合格してストレステストにも合格した31基の原発については、ただちに再稼働を認めるべきだ。原発を再稼働し、エネルギーを低コストで十分使えるようにすることが最大の景気対策である。
自民党は選挙中は有権者の反発を恐れて「原発は10年以内に検討する」とか「再稼働は3年以内」とか、腰の引けた話をしてきたが、選挙で民意は明確になった。民主党がスケープゴートにしてきた原発を正常化し、日本に法の支配を取り戻すことが、政治に信頼を回復する第一歩である。