アゴラは討論のための「広場」なので、リフレ派の投稿も反論も歓迎する。きのうのノア・スミスの記事について簡単にコメント。
この記事のポイントは、日銀が「無制限に金融緩和」すると、マイルドなインフレではなくハイパーインフレ(金利上昇による財政インフレ)が起こる可能性があることを認めた上で、そのリスクは大したことないと評価していることだ。
我々はハイパーインフレをどの程度恐れるべきなのだろうか? 経済への影響という面では、それは国家債務不履行に非常によく似ているが、超過支出を制御しないかぎり日本はどのみちその方向に向かって進んで行く。ハイパーインフレは貯蓄を破壊し、経済活動の一時停止を引き起こす。それは政府が厳しい緊縮財政の実施を強いられるまでの約1年間、継続するだろう。ハイパーインフレが終わった後、経済は往々にして経済活動の再起動とともに強力に回復するのである。
これは最近よくいわれる焼け跡リセット論だが、その被害は1年ぐらいですむだろうか。90年代の不良債権問題は10年以上続いた。アメリカ発の金融危機は、5年たってもまだ回復できないばかりか、ヨーロッパに波及している。日本の財政危機はそれより大規模なので、二度と立ち直れないダメージを日本経済に与えるおそれが強い。

『もしフリ』でもシミュレーションしたように、ハイパーインフレの最大の弊害は財政破綻よりも金融破綻である。金利が数十%になると「国債バブル」が崩壊してほとんどの邦銀が破綻し、取り付けが起こるだろう。金融資産が蒸発して1000万円以上の預金はカットされ、今のヨーロッパよりもはるかに苛酷な金融危機が起こるだろう。

円安になると輸出産業は息を吹き返すが、彼らが原料にするエネルギーの価格は暴騰し、海外に保有する外貨建ての資産も大幅に減価するので、ネットの効果はマイナスである。ウォン安が社会不安を引き起こしている韓国のように、極端な通貨安とインフレは貧富の格差を拡大し、国民生活を荒廃させる。

インフレが数%ですむなら、「インフレ税」で世代間の不公平を是正するというノアの議論も成り立つが、70年代のように数十%になると経済が破壊される。それによって経済を「再起動」させるという効果も疑問だ。70年代には日本経済の潜在成長率が高かったのでダメージを乗り超えることができたが、高齢化した日本にその体力があるだろうか。

ノアのきらいなファーガソンが指摘するように、財政破綻をきっかけにして終わった文明は多い。国家が崩壊して戦争や革命が起こるからだ。今の日本には革命を起こすエネルギーも残っていないので、何もできないまま半永久的にマイナス成長が続くおそれが強い。そのリスクを国民が理解した上でギャンブルに打って出るなら、それも一つの選択肢だが。

なおキンボールの提案している電子マネーは技術的には可能で、私も3年前に検討したことがあるが、金の流れを透明化することをいやがる人々が多いので、政治的には不可能だろう。

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